日本人は「新築好き」と言われます。確かに誰もまだ使っていない真新しい部屋、真新しいキッチンやバスルームは魅力的です。それだけに、築年数が古くなると家賃が下降気味になるのは当然のことです。でも、実際のところどのくらい違うのでしょうか?
築年数と家賃の関係
基本的に物件の家賃は一概に築年数だけでは決められません。広さや周囲の住環境、または利便性などのほうが家賃を左右するファクターとして大きいのは当たり前の話です。
その上で、平均して築年数によって家賃がどう変わるのか、株式会社LIFUL(ライフル)が運営する、住宅情報サイトでみてみましょう。これは大手で物件数も多く、テレビCMも行っているので名前を聞いたことがある人も多いでしょう。
※参考サイト:「ライフルホームズの東京都の家賃相場」
実際に検索してみよう
まず、左側で物件の専有面積が選択できますが、ここは「指定なし」にします。これで狭い部屋から広い部屋まで、すべての部屋が選択に入ります。
次に肝心の築年数ですが、まずは「新築」で見てみましょう。東京23 区に限れば、一番高い港区が13 万1,500円です。いいお値段ですね。
逆に一番安い葛飾区は、6万7,200円です。倍以上の開きがあるというのに驚きますが、これは必ずしも同じ物件の家賃が倍というわけではありません。港区には月の家賃が100万円を超えてくるような高級物件も多く、物件自体のグレードの差異がこの価格差を生んでいると言えます。
築10~15年なら?
これが築10~15年に検索条件を変えてみると、相変わらず最高は港区で11万7,900円です。最低はやはり葛飾区で6万1,800 円ですが、ここでちょっと面白いことに気づきます。
たとえば、足立区は新築の平均家賃は6万8,100円と、最下位の葛飾区との開きは1,000円弱ですね。これが築10~15年になると6万2,600円で、その差はやっぱり1,000円です。
つまり、ここからわかるのは、築年数による下落幅は大体同じような価格レンジの地域の場合、変わらないということです。
さらに老朽化した建物なら?
さらにもう少し古いもの、築20~30年の家賃を比べてみましょう。やっぱり最高は港区で10万4,800円です。そしてやはり最低の葛飾区は5万6,400円です。
この結果を比べてみてわかるのは確かに築年数によって同じ地域の平均家賃は安くなっていくが、基本的に新しくても古くても高い地域は高く、低い地域は低いとい地域性は変わらないということです。
地域性で考えてみる
それでは、その地域性で考えてみましょう。
まず、一番高い港区ですが、大企業や官公庁、繁華街、すべてに近い至便の土地です。さらに法人も多く税収が豊かなので町のメンテナンスや福祉も充実しています。一言でいえば「住みやすい」と言えるでしょう。
確かに家賃は高いですが、通勤手当が出ない人だったり、学生だったりすると、通勤通学の交通費は自費になりますよね。勤め先や学校が都心の場合、自転車一台あれば交通費ゼロで移動できるという目に見えない節約ポイントもあるので、目先の家賃だけで考えず生活コスト全般として考えてみるといいでしょう。
一方、葛飾区をはじめとする安い地域は、「下町」と言われるところが目立っています。確かに利便性を考えれば、毎日の通勤ラッシュに揺られて往復すると考えるとちょっといやだなと思う人が多いことも、人気が低く家賃が安い原因かもしれません。
古い物件の問題点
古い物件は味があると言う人でも、日々の生活の中ではそれなりの不便には耐えて暮らしています。
とにかく設備が古い
信じられないかもしれませんが、都心の一等地のマンションでもいまだに湯沸かし器が巨大なタイプだったり、カチカチと回して火をつけるお風呂という平成生まれにはたぶん想像もできないような古いものだったりすることがあります。
トイレの水が出なくなるとか止まらなくなるなんていうのは、あまりにも頻繁に起きるのでトラブルのうちに入らないような気さえしてきます。慌てず騒がずトイレの給水タンクに手を突っ込んで直せるくらいのDIY能力は欠かせないかもしれません。
また、部屋に古い作り付けクーラーがあっても、スイッチを入れるとぶるぶる震えるだけでまったく冷えないので、仕方なく自分で新しいものを買った人もいます。
水道管の鉛が気になるなら
配管自体が古いと、水道から出てくる水の安全性に疑問を感じるかもしれません。赤さびが混じっているとかなら目で見てわかりますが、目に見えなくても水道の引き込み管がいまだに昔の鉛管から交換されていないケースがまだたくさんあります。
水に溶けて体の中に蓄積される重金属、鉛はローマ帝国を滅ぼした犯人に扱いされるほど、人体に悪影響を与えます。
水道の引き込み管の鉛くらいなら大して害がないという説もあり、気にしなければそれでいいような気もしますが、鉛自体が体に害があることは事実なのでいやだという人もいるでしょう。
鉛管かどうかは不動産屋に尋ねてもいいし、引っ越してしまった後なら自治体に依頼すると調べて教えてくれます。
もし鉛管が使われていて気になるなら、浄水器を導入するか、朝一番やしばらく留守にした後の最初の水など、鉛濃度の高いと思われる水はバケツ一杯程度飲料以外に使うなど、工夫が必要かもしれません。
古い物件はここをチェック
築年数が建っている物件にどうせ住むなら、いいところも悪いところも知った上で住みたいものです。あばたもえくぼで画一的でどこを見ても同じように見える新築物件より、よっぽど味のある暮らしができるかもしれません。ポイントは、不安さに自分がどこまで我慢できるか、対処できるかを見極めることです。
耐震性が不安
いつどこで巨大地震が起きてもおかしくないと言われている日本ですから全国どこにいても地震への備えはしておきたいものです。その際、自分が住んでいる建物の耐震性はかなり気になりますよね。阪神淡路大震災の時のビルの中層部が、ぺしゃんこに潰れている光景はショッキングでした。
この阪神淡路大震災をきっかけに耐震基準が変わったため、1981年を境に旧耐震基準と新耐震基準に分かれますが、気になるなら不動産屋に尋ねてみましょう。
また、それより古い建物でも、今は後付けの耐震補強がかなり頑丈にできるようになったので、なんらかの耐震対策がしてあるかどうかは確認しておきたいところです。
メンテナンスが不安
ビルの持ち主が「もう早く建て直したい」と思っている場合、配管や設備などが壊れてもなかなか直してくれないかもしれません。ざっと建物全体を見てみて、ゴミが散乱していたり共有部分の電気が切れたままで放置されていたりするようなら、持ち主も住人もその建物を大事にしてこれからも暮らしていこうという気がないということです。
どれだけ古くても、みんなが「大事に住んでいこう」と心がけているような場所は、温かみがあって暮らしやすいですよ。
水回りが不安
古い建物の場合、一番怖いのが配管パイプの故障です。どこに配管が通っているかは住民には知る術はないので、配管の故障でその真下にあった押入れが水浸しになって、ブランドバッグがすべてだめになってしまったという悲劇に見舞われた人もいます。配管のメンテナンス状況については、借りる前に必ず聞いておきましょう。
また、洗面所やトイレ、お風呂場は古くなればどうしても汚れが蓄積していきます。入居前にゴムパッキンの部分はよくチェックしておきましょう。ポツポツとカビが生えているなら、カビの根元はゴムパッキンの中に入り込んでいるので、自分がどれだけ丁寧に使ってもカビてくるかもしれません。
「最初からカビていた」という共通認識を持ってもらうことが大切です。
古い物件はあまり人気がありませんが、現代の画一的な賃貸住宅とは違う味のある部屋や贅沢なしつらえがある部屋がたくさんあります。古いからといって敬遠せず、古さを楽しむくらいの気持ちで住んでみるのもいいのではないでしょうか。