敷金返金時の振込み手数料は大家と借主どっちが負担?

敷金返金時の振込み手数料は大家と借主どっちが負担?

賃貸物件から退去するときには、補修費用によっては敷金が返金されます。その際に、敷金返金に関する振込手数料はどちらが負担するでしょうか。大きな金額ではないとはいえ、その辺りはきちんと整備しておく必要があります。

今回は、敷金返金時の振込手数料負担について、事例を基に解説します。また、敷金返金時に注意するべき点も合わせて解説します。

敷金の返金方法

敷金の返金方法は、大家や不動産管理会社から、賃借人へ銀行振込されることがほとんどです。賃料の引き落としを行っていた口座へ、敷金の返金分を振り込むという流れが一般的になります。

そもそも敷金とは、退去時に修繕が必要であり、かつ費用負担が賃借人の負担になるときのために、大家が「預かっている費用」です。賃借人は、その家の賃貸借契約を結び、入居する際に敷金を大家へ預け入れます。通常は「賃料の1か月分」相当額であることが多いです。

仮に、敷金を100,000円預けていて、賃借人が退去するときに、賃借人が負担するべき補修費用が30,000円あったとします。その場合には、100,000円から30,000円引かれた70,000円が、大家か不動産管理会社から賃借人に返金されるということです。

振り込みの場合の手数料負担はどっち?

振り込みの場合の手数料負担については、原則大家もしくは不動産管理会社の負担になります。仮に、賃貸借契約書に「敷金返還時の振込手数料は借主(賃借人)の負担になります」と明記してあれば別ですが、そこまで明記していることは少ないです。

振込手数料のトラブル事例

2012年12月に下記のようなトラブルが起こっています。

  • 賃貸借契約解除に伴い原状回復工事をした
  • 原状回復工事に伴い、賃借人負担の分を差し引いて敷金を賃借人に返金した
  • そのときに振込手数料を賃借人負担として、手数料の金額を差し引いて返金した

上記に対して、賃借人が「手数料を自分が負担するのはおかしい」とトラブルになったという事例です。

大家側は、「賃料の支払いに関しての振込手数料は賃借人の負担である」と賃貸借契約書に明記してあることから、敷金の返金にかかる振込手数料も賃借人の負担であると主張しました。しかし、結論は不動産流通推進センターが「敷金の返金は賃借人に負担ではなく、大家側が負担するべき」という回答しています。

不動産流通推進センターは、不動産に関する各資格や、統合サイトを管理する財団法人であり、一般消費者からの不動産に関する相談も受けている機関です。そのため、不動産流通センターでの回答は、法的な拘束力はありませんが、一般的な慣例からみた「正式回答」になります。

つまり、今回不動産流通推進センターが答えた、「敷金返金の振込手数料は大家が負担するべきである」という回答は、正式な一般的な回答になります。

※参照URL: 不動産流通推進センター

回答理由

このような回答が出た理由は以下の通りです。

  • 債務者は大家側である
  • 当事者が残金返還のための費用を定めていない
  • その場合は債務者が負担するのが通例

つまり、敷金という債権を預かっている債務者は大家側であり、今回のケースでいうと敷金返還の振込手数料を誰が支払うかは、賃貸借契約書に明記されているワケではありませんでした。

その場合には、民法484条、485条に習い、債務に関する履行費用は債務者が負担するべきという結論になったというワケです。ここでいう「履行費用」が、敷金返金の振込手数料に当たるということです。

敷金が返還されるまでの期間

敷金が返還さるまでの期間は、おおむね1か月前後です。ただ、大家や不動産管理会社によっても異なるので、一概には言えないこともあります。1か月経っても一切連絡が来ない場合は、敷金返還が「遅い」と言えるでしょう。

敷金返還までのやりとり

そもそも、敷金が返金されるまでのやりとりは以下の通りです。

  • 部屋の状況の確認
  • 見積書の送付
  • 見積書の返送

まず、管理会社、もしくは管理会社が斡旋している業者と賃借人で、部屋の状況確認をします。クロスやフローリング、水まわりなどをチェックして、賃借人の過失による補修は賃借人の補修になります。

その場で指摘をして賃借人が納得すれば、工事見積書にサインをして完了です。後は、実際に工事する日程にもよりますが、おおむね1か月程度では敷金が返金されるはずです。

ただ、その場で補修内容に了承できないときは一旦持ち帰りになり、再度管理会社から見積書が送られてきます。敷金返金が長引く理由は、この「見積書の同意」がスムーズにいかなかったときです。場合によっては、数回のやりとりの後に見積書が受理されるので、その分敷金の返金は遅れます。

敷金返還が遅い理由

まず、敷金返金が遅い理由としては、以下が挙げられます。

  • 後回しにされている
  • ほかの部屋と一緒に補修する
  • 社内スケジュールに合わせる

単純に、大家側から後回しにされているという理由は意外と多いです。厳密にいうと、大家は不動産管理会社に原状回復工事については任せているので、不動産管理会社の対応が遅いということになります。

特に、大規模な物件をたくさん抱えている管理会社の場合、対応が遅くなります。年度末など、引っ越しが多くなり退去立ち合いが増える時期は、尚更後回しにされてしまうことが多いです。

また、補修費用の大部分は職人へ支払う人件費です。たとえば、リビング・ダイニングのクロス張替え費用が50,000円だとします。その50,000円の中には、「クロスの素材費用」も入っていますが、それは微々たるもので、8割以上は職人の人件費です。

そのため、ほかの部屋の原状回復工事と合わせて工事することが多いので、どうしても工事費の見積もりには時間がかかるということです。さらに、社内の経理スケジュールが原因で、資金返金が遅れることもあります。たとえば、「月初10日までの経費は月末振り込み」であれば、11日に経費計上すれば翌月末の振り込みになるということです。

敷金が返還されないときの対応と対策

このように、敷金返還の期間は状況によって異なり、中々敷金が返還されないことも少なくありません。そのときは以下のような対応・対策をしておきましょう。

  • 細かな見積もりを要求する
  • 事前に連絡しておく

この対策をしておくことで、少しは返金が早くなります。

細かな見積もりを要求する

まず、退去時の立会いのときに、見積もりが納得できなくて持ち帰りとなったときです。そのときは見積書に記載する金額は「正確に」「細かい」項目を記載するように促しましょう。たとえば、「撤去費用」などであれば、何をどこに撤去する費用なのかを明記してもらいます。

また、「クロス張替え費用」であれば、どの箇所をどのくらいの広さで、さらに素材費と人件費の内訳まで明記してもらいましょう。

事前に連絡しておく

また、事前に敷金返金のスケジュールを連絡しておくことも大切です。「いつ」見積もりが送られてきて、「どのタイミングで」敷金が返金されるのかを聞きましょう。そうすれば、そのスケジュール通りに動くので、敷金返金作業が後回しになることも少ないです。

このように、敷金の振込手数料は、原則「大家側」の負担になります。そのため、敷金振り込みを待っている場合には、事前に管理会社に言っておくと良いでしょう。仮に、手数料を差し引かれて入金されれば、上記のような主張が通ったとしても手間がかかるからです。


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