日本の住宅に供給されているガスは、都市ガスかプロパンガスのどちらかです。都市部でもアパートの階段脇にプロパンガスのボンベが並べられている様子を見かけることもあります。
賃貸物件ではどちらのガスを選べばよいのでしょうか。都市ガスとプロパンガス(LPガス)の違いと、扱う際の注意点を紹介します。
都市ガスとは
日本の大手都市ガス会社は、東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガスの4社です。それ以外に準大手ガス会社や他の中小規模のガス会社が全国で200以上存在しています。
都市ガスは、ガス製造工場から各家庭に地中のガスの導管を通じて供給されています。2017年4月からは、都市ガスの小売全面自由化に伴い、製造会社とは別に、新たな小売業者が参入しています。
都市ガスの原料
都市ガスの原料は、メタンが主原料の天然ガスです。原料は東南アジアやオーストラリアなどからの輸入で賄っています。
都市ガスの特徴は
都市ガスは、ガス管が地中に埋設されている地域では、各家庭に都市ガスの配管設備があれば、どこでも利用できます。現在プロパンガスを利用している地域も、徐々にガス管の埋設工事で導管が延伸され都市ガス利用者は増えつつあります。
供給している会社はどんなところ?
都市ガスは、都市ガスが自由化される前までは、地域独占で、それぞれの地方で大手の都市ガス事業者が、国に届け出を行い、国で決められた金額でガスを供給していました。
それが2017年の都市ガス自由化により、都市ガス事業者のエリアを超えた事業展開や、新たなガスの小売事業者が参入することにより、さまざまな料金メニューを消費者が自由に選択できるメリットがあります。
今までは都市ガスの製造と販売は、地域ごとに関東の東京ガス、東海地方の東邦ガス、関西の大阪ガス、九州北部の西部ガスの大手都市ガス会社4社がほぼ独占してきました。
しかし、2016年の電力自由化に続き、2017年4月にはガスの全面自由化が始まったことで、今後は新たに参入するガス小売事業者が独自の料金メニューで消費者を獲得できるようになりました。
そのため、既存の大手都市ガス会社も営業エリアをさらに拡大したり、既に乗り出していた電力の小売などとのセット割引の新たなプランを発表するなど、顧客獲得競争が激化しています。
大手の電力会社が電気とガスのセット割引のプランを公表したことを受け、他の小売事業者もさらに値下げで対抗するなど、消費者にとって選択の幅が広がりました。
都市ガスは安くてお得?自由化でどう変わる?
2017年4月より、都市ガスの全面自由化が始まり、個人宅で使いたいガス会社を自由に選べるようになりました。電力の自由化とほぼ同じで、各小売事業者の中から自分にあったプランやセット割など比較しながら、自分にとって割安になる事業者を選択できるようになったのです。
都市ガスの小売業者が増える
自由化になったからといってガスの成分や製造する会社が変わるわけではありません。今までと同じように既設の導管を使って各家庭にガスが安全に供給されることは変わりありません。都市ガスの小売全面自由化ということで、ガスを販売できる小売事業者が参入して自由な料金プランで商売できるということです。
多彩な料金プランとセット割で顧客獲得を目指す
電力自由化と同じように、各社さまざまな料金プランやセット割などを打ち出してきていますが、電力と違いガスは参入するハードルが高いのか、事前登録も20数社にとどまり、今後の動向を見守る慎重な企業も多数ありそうです。
プロパンガス(LPガス)とは
プロパンガスは、建物の外に並べられた大きな筒状のガスボンベに充填されていて、建物に設置された配管を通って各住戸に供給されます。一般的には、都市ガスよりも料金が高いと言われています。それは、ガスボンベの設置のための人件費や運搬費用が上乗せされることも一因です。
プロパンガス(LPガス)の原料
プロパンガスの原料はプロパン、ブタンです。ほとんどを輸入に頼っています。プロパンガスは、主成分がプロパンの場合の呼び名で、主成分がブタンだとブタンガスと呼ばれます。また、LPガスとは、液化石油ガス(liquefied petroleum gas)の略称で、プロパンやブタンなど比較的液化しやすいガスの総称です。
プロパンガス(LPガス)の特徴は
プロパンガスはガスボンベを接続することにより各家庭の配管で供給されます。熱量は都市ガスの約2倍以上の高いカロリーを誇ります。その特性を生かし、高火力調理が必要な中華料理店や製造工場などでは、都市ガスが普及している地域でもプロパンガスを使用するケースもあるようです。
プロパンガスは、空気より重く、下にたまる特性を持ちます。実際は無臭ですがガス漏れに気付けるようにわざと臭いをつけてあります。
供給している会社はどんなところ?
都市ガスと異なり、プロパンガス会社は大小さまざまな規模の会社を合わせると、全国で20,000社を超えると言われています。都市ガスのように届け出制ではないため、ガス料金も自由料金となっており、安いところから高いところまで都市ガスの1.2倍から2.2倍程度の料金差が見られます。
なぜアパートはプロパンガス(LPガス)が多いの?
都市ガスの導管が通っていない地域ではプロパンガスに頼らざるをえません。都市ガスが通っている地域でも、各家庭まで配管工事をするにはかなりの金額がかかります。一般的な戸建てでも100,000円程度かかり、集合住宅では住戸ごとに配管をするので、さらに高額になります。
プロパンガス会社も各住戸まで配管をするのにはそれなりの費用がかかるのですが、プロパンガス会社との長期契約を前提で工事費を無料にしている場合が多いです。そのため、よほど資金力があれば別ですが、そうではない小規模賃貸アパート経営のオーナーはプロパンガスを導入するケースが多くなります。
プロパンガス(LPガス)はすでに自由化になっている
プロパンガスは自由料金制なので、料金差はかなりの開きが見られます。賃貸住宅にもともと設置されていたプロパンガス会社を使う人が多いかもしれませんが、不動産会社や貸し主が入居の規約に定めてない限りは、自分で安い会社を探して選ぶことができます。
プロパンガス会社の適正な料金価格を比較するサイトがありますので、備え付けのプロパンガス会社の料金が高いか安いかいちど調べて見た方が良さそうです。
参考サイト:
一般社団法人プロパンガス料金消費者協会
https://www.propane-npo.com/useful/compareprice.html
プロパンガス 料金比較サイト
http://pro-gas.jp/
都市ガスとプロパンガスとの違い
引っ越し先が都市ガスかプロパンガスかというのは、気をつけて見ておきたい事項です。なぜなら、ガスコンロが設置されていないところでは自分で対応するガス機器を用意しなければならないからです。
それまで都市ガスを使っていた人が、プロパンガスの賃貸住宅に引っ越す際には、プロパンガス用のコンロに買い換えるか、プロパンガスでも使えるように修理してもらわなければ、そのままでは使うことができません。また、プロパンガスの使い方によっては、今までとのかなりの料金の差に、請求書が来てから驚くケースが多いようです。
各家庭への供給方法に大きな違い
都市ガスは供給がストップしていない限りはいつでも不自由なく使えます。しかし、大規模な災害が起きてしまうとそのガスが使えるようになるまでの時間がかかると言われています。地域にもよりますが大体1か月から2か月程度はガスが使えないことも想定しなければなりません。
それに比べてプロパンガスは、ガスボンベから各家庭の配管までの距離も短いことから3日から1週間程度あれば使えるようになります。このようにガスの供給方法が異なることから、万が一の災害時に便利さを実感するのがプロパンガスと言われています。
賃貸物件選びに密接に関わるガス料金の差
都市ガスの埋設工事がされていない地域では、そもそも一般家庭でもプロパンガスを使用している都市ガスの埋設工事がされていない地域では選択肢は1つしかなく、プロパンガスを利用することになります。
しかし、中には都市ガスが整備されているにも関わらず、プロパンガスを利用する賃貸アパートなどが多くあります。周辺の賃貸物件がプロパンガスだけなら選ぶ余地もないので悩みません。
しかし、プロパンガスのアパートと都市ガスのアパート両方が存在する場合はどうでしょうか。どちらを選ぶことになるか迷うのではないでしょうか。この場合、一般的にはプロパンガスを利用する物件のほうはやや家賃が安く、都市ガスが整備されている物件は家賃がやや高い傾向にあります。
一般的には、都市ガスの料金は安く、プロパンガスは高いと言う認識です。料理が好きで煮込み料理を頻繁に作る人や、毎回お風呂の浴槽にお湯を貯めてつかりたい人、ガス暖房器具を使う人など、ガスを長く使う生活をする人にとっては、ガス料金は切実な問題です。
しかし、普段からそんなにガスを長く使ったことのない人にとっては、その料金差はあまり気にならない額に収まっていることもあります。その分家賃が安いことを思えば、月に必要な支出をトータルして考えてもお得と感じる人もいるようです。
安全性が高いのはどっち?
プロパンガスは、空気より重いため床で寝ている乳幼児やペットにとってガス漏れがあったら危険とか、事故があったら怖いと感じる人もいるようです。しかし、万一ガス漏れをしてもすぐ気付けるように、ガス警報機の設置はプロパンガスを使う家庭ではほぼ100%設置しているため、安全面での問題はありません。
都市ガスでもマイコンメーターで地震が起きた際や、ガス漏れを検知したときには自動的にガスの供給をストップしますが、不具合がないとはいえないため過信は禁物です。
最新のガスコンロの取扱説明書でも、ガス漏れに気付いたら、絶対に火を使わないこと、換気扇のスイッチを入れないこと、電源プラグの抜き差しをしない、周辺で電話を使わない、などの説明が記載されています。都市ガスでもプロパンガスでも、どちらにしても漏れたガスに引火すれば大事故につながります。
このように、安全面では都市ガスとプロパンガスで、一概にどちらが安全でどちらが危険という断定はできません。
まとめ
気に入った間取りの物件がようやく見つかったのに、プロパンガスだというだけで候補から外すのはもったいないですよね。プロパンガスの賃貸物件は家賃も安い傾向にあります。
高火力を使えば、その分ガス使用時間の短縮にもなっていて、実は料金的には大差ないかもしれません。使い方を工夫することで節約につなげられるでしょう。賃貸物件を選ぶ際には、ガスの種類だけで比較せず、総合的に見て選んだ方が良いと言えます。