なんでもやります!という便利屋の宣伝やチラシを見たことはありませんか?本当になんでもやるのか、とその仕事内容をよく見てみると、引っ越しの荷造りや引っ越しの手伝い、大型家具の移動というものもあります。
便利屋で行う引っ越しのサービスと引っ越し業者が提供するサービスとどんな点が違うのか、その内容について説明します。
便利屋ってどんなことをしてくれるの?
便利屋はなんでもやるとは言っても、さまざまな分野のエキスパートたちが在籍する大きな会社ではありません。そんなプロに頼めば、それこそ専門の業者に頼んだのと同等の料金を支払わなければならないでしょう。
そのような難しい案件ではなく、個人が困っていることやちょっと手を貸してほしいことなどを手伝ってくれる業者という認識がふさわしいと思います。
多岐にわたる便利屋の仕事内容
パソコンの設定や接続、犬の散歩、買い物などから、草むしりや雪かきなどの体を使うもの、また蜂の巣の撤去や住まいの修繕工事など、幅広く引き受けてくれます。演技系の役者を派遣するサービスをしているところでは結婚披露宴の仲人や友人役をしたり、犬のしつけやシロアリ調査をしたりというところもあり、業者により得意不得意がありそうです。
便利屋は規模も仕事内容もさまざま
個人事業主となって一人で営業したり、専門分野を持つ何人かで営業したり、フランチャイズ加盟をして営業するところなど、さまざまな規模のところがあります。それぞれホームページを見ると得意な仕事や特徴、設定してある料金がわかります。
便利屋と引っ越し業者はどう違うの?
どちらも引っ越しを行ってくれるなら安いほうに頼みたい、と思う人もいると思いますが、両者には決定的な違いがあります。どちらを選ぶか迷っている人も、いちど目を通しておいてください。
業種の違いは
業種は便利屋は家事支援サービス業、引っ越し業者は一般貨物自動車運送事業、軽トラックを使用するところは貨物軽自動車運送事業と、そもそも業種が違います。引っ越し業者は国土交通大臣の許可を得て、軽トラックを使用するところは運輸支局長の許可を得て引っ越し業者として事業を行っています。便利屋は、開業するにあたり特に資格や届け出は必要とはしません。
引っ越しの作業内容は
便利屋は、引っ越し作業の「お手伝い」をしてくれる、という点に注意しなければいけません。引っ越し業者のように、作業員がすべての家財を運び出してトラックに載せ、運転して新居に運んでもらうという一連の流れを期待しているとしたら、それはできません。
便利屋に引っ越しを頼むときは、自分が主体となって引っ越しを進める必要があります。それに対して便利屋は依頼主の引っ越しに手を貸してくれる人であり、お金を払ってお手伝いを頼むという形になります。
引っ越しにかかる費用の計算方法は
正式な引っ越し業者はトラックの大きさに対する時間制や距離制運賃に応じて引っ越し料金を決めます。便利屋に支払う料金は、手伝ってくれた人に支払う時間制料金が基本です。
1時間当たり2,000円から4,000円ぐらいの時間制料金になっていて、見たところ3,000円とするところが多い印象です。そこに出張費として2,000円や3,000円が加算されます。引っ越しの手伝いに作業員を2人頼み、9時から15時まで6時間かかった場合は、出張費を2,000円とすると、便利屋に支払う料金は
(出張費2,000円+時間制料金3,000円×6時間)×2名=40,000円
になります。養生資材や家具の分解組み立てを頼むなら、そのときに必要となる工具を運ぶため便利屋の車輌を使う場合は、車輌費3,000円程度と養生費・資材費が別途かかります。
お昼にかかってしまったときは、さっと軽食ですませる場合や、しっかりと一時間の休憩を取り、その間は費用を不要としているところなど、色々なケースがありますので、念のため事前に確認すると良いでしょう。
引っ越し業者のようにあらかじめ訪問した上での見積もりや値引きはありません。気をつけたいのは、時間制料金のため、てきぱきと動いてくれる人が来ても、体力面が不安な年配の人が来ても、支払う金額が同じということです。
なかなか作業が進まず時間ばかりかかってしまっても、相当分の料金は支払う必要があります。当然、引っ越し業者も引っ越し当日になってみなければどんな作業員がくるかがわからず、当たりハズレがあることもあり、どっちもどっちかもしれませんが。
トラックを運転するのは誰?
引っ越し業者は、当然業者の運転手が自社のトラックを運転して新居まで荷物を運んでくれます。一方、便利屋はものを運んで料金を受け取るのは違法に当たるため、依頼者本人が自分で車を運転する必要があります。
便利屋の車輌を使って自分で運転するのもレンタカー扱いになり、それも違法になります。
つまり、便利屋に引っ越しの手伝いを頼むときには、自分の車を使用して自分で運転をして荷物を運ぶか、レンタカー会社でトラックやワゴン車を自分で借り、自分で運転しなければならないということです。ここが大きく違う部分になります。
先程の2名に作業を頼んだ場合の40,000円に加えて、レンタカー代と保険料やカーナビなどのオプション料金が必要です。
特殊作業の対応は
引っ越し業者は、エアコンの移設や、ピアノの搬送、高層階へのクレーン吊り上げ作業など専門的な資格や技術を要する作業は、自社で行ったり提携先の業者や資格保持者が対応します。
便利屋はなんでもやりますとは謳うものの、資格者がいれば問題ありませんが、そうでないときは原則資格保持者でなければ行ってはならないと法律で決められているエアコンの設置工事、劇薬を扱う害虫駆除、車輌を使用した人の送迎などは無資格者は行うことができません。
作業をする人はどんな人たち?
社内研修を受けた体力自慢の人たちで構成されるのが引っ越し業者です。毎日のように引っ越し作業をこなす引っ越しのプロです。便利屋は、さまざまな仕事を幅広くこなすため、毎日引っ越し作業に携わる専門の作業員というわけにはいきません。
なかには過去に引っ越し業者に勤めていた人もいますが、毎日引っ越し作業を行っていることは少ないでしょう。
荷物に対する補償は
ここも気をつけたいところです。引っ越し業者は預ける荷物に対して引っ越し荷物運送保険に会社で加入しているので、万一引っ越し作業中に荷物に破損があった場合は補償してもらえます。
しかし、便利屋はお手伝いをしてくれた人が仮に荷物を落として壊してしまっても、便利屋では補償してくれません。自分で損害保険会社に保険をかけておくなど対策が必要です。
自分の疲労度は
引っ越し業者に頼めば引っ越し当日は自分からは動くことがなく、引っ越し業者からの質問に答えたり、荷物を置く場所の指示を出したりするだけで、自分で体を使って引っ越し作業をすることはありません。
逆に下手に動いてしまうと引っ越し作業の邪魔をしかねません。便利屋に頼む場合は、車の運転をし、自分が主体になって一つ一つやってほしいことを伝えなければなりません。
また、時間制料金で来てもらっているので早く終わらせようと、自らも率先して動かなければならないでしょう。精神的にも肉体的にも引っ越し当日の疲労度は段違いです。
まとめ
便利屋と名乗っていても、国土交通省に引っ越しの事業届を出し正式な許可を受けて営業している業者もあります。そういう業者は、他社と差別化を図るため、必ずホームページに許可番号を提示して宣伝するはずなので、見ればわかります。
しかし、そうではない便利屋が引っ越しのトラックの貸し出しや、荷物を載せて運び利益をあげることは違法に当たります。場合によっては、利用した本人にも罰金が課せられることもあるため注意が必要です。