杭打ち問題で明らかになった分譲マンションのリスク

杭打ち問題で明らかになった分譲マンションのリスク

「杭打ちデータの偽装問題」が2015年に大きな問題となりました。自分の住んでいるマンションは大丈夫かな?と心配になった人も多いことでしょう。今回は、ここから読み取れる、分譲マンションを購入するときのリスクについて考えてみます。

分譲マンション購入にはリスクが伴う

私も長年住宅関連の仕事に携わっているセミプロのような身分なですが、2015年に大きな問題となった大手ゼネコンによる「杭打ちデータの偽装問題」については、ハッキリいって偽装を見抜くのはほぼ不可能だと思います。

もっと解りやすい言い方をするのであれば、この偽装マンションを実際に販売していた営業マンですら、今回の杭打ちデータ偽装のことは間違いなく知らなかったでしょう。このように実際販売している会社の営業マンすら知らない、解らないようなことをいち消費者が契約前に見破ることなんて常識的に考えてできるはずがありません。

絶望的な結論になってしまいますが、「分譲マンションを購入する以上、こうしたリスクがあり、それを回避する対策は今のところ無い」ということです。しかも、今回のデータ偽装マンションが地元業者から販売されたならともかく、日本を代表するスーパーゼネコンが販売元だったのですから、もうこればかりはどうしようもありませんし、何をどう信じていいのか解らない!というのが正直な感想です。

3,000万も5,000万もする一生に一度の買い物が、いざ購入してみたら何の価値もない欠陥マンションだったんですから、たまったもんじゃありませんよね。

しかも多くの専門家が言っているように、今回の杭打ちデータ偽装は、この業者だけの問題でないという見方が正解でしょう。きっと表面化してないだけで、同じような偽装は日本中のマンションで起こっていると考えるのが妥当です。その証拠にこのデータ偽装問題以降、次々に同じような欠陥マンションが浮き彫りになっています。

戸建てとマンションではリスクの大きさが違う

このようなデータ偽装問題は決して分譲マンションだけの話ではありません。当然戸建て住宅やオフィスビルでも同じような問題が起こっている可能性は十分にあります。しかし戸建て住宅と分譲マンションでは、こうした欠陥住宅のリスクが全然違います。

今回のようにゼネコンが建て替えを提案するのは稀なことだと思いますし、現状で考えられる最善の策だと思います。しかし、それで万事解決といかないのがマンションなんです。戸建てであれば欠陥が見つかった場合、新たに建て替えをしてくれればある程度の問題は解決します。しかしマンションとなれば、建て替えを提案しても多くの問題が付帯してきます。

例えば、建て替えには、膨大な期間を要します。今回のマンションでは、建て替えが終わるまでの工期は3年半だと言われています。当然その間は該当マンションには住めませんので、賃貸物件に仮住まいすることになります。

もちろん費用は販売業者が負担してくれますが、問題はそれだけじゃありませんよね。子供の学校が遠くなったり、近所付き合いをイチから始めることになります。

工期の問題以前に建て替えが実現するのか?という不安もあります。基本的にこうした分譲マンションの場合、住民の3分の2以上が賛成しなければなりません。仮住まいが嫌で反対する人もいるでしょう。もし3分の2以上の賛同が得られなければ、建て替え工事は一向に始まりません。

さらに言うと、今回は資金力のあるゼネコンでしたが、これが地元マンション業者であれば、建て替えするほどの体力もなく、そのまま倒産なんてことは当たり前にあります。そうなると、もう誰も保証してくれる人はいないので、該当マンションを購入した人は泣き寝入りするしかありません。

ちなみに日本全国には、地盤改良を含めた杭打ち業者が450社ほどあるそうです。この450社の中で、従業員数10名未満の会社は全体の50%以上もあり、資本金1,000万円未満という会社も全体の30%以上あるそうです。

そうした小規模な杭打ち業者が、今回のような大事件を引き起こしてしまった場合、どこまで保証や対応をしてくれるでしょうか?きっと一発で倒産してしまうのではないでしょうか。

杭打ち偽装問題の発覚で戸建て住宅の売り上げが増加

今回の杭打ちデータ偽装が発覚して以降、戸建て住宅の新規契約件数が大幅に増加しているそうです。ある住宅販売会社では、1ヶ月の新規契約件数が20棟ほどだったのが、今回の偽装問題以降は、1ヶ月30棟から35棟にまで増えたそうです。

これは多くの人が「杭打ちデータなんて改ざんされてしまっては、素人では到底見抜くことはできない」と悟ったからだと言えるでしょう。対策を講じることができるような手抜き工事であれば、ここまでマンション離れが深刻になることはありません。

さらに追い討ちを掛けたのが、その偽装マンションを販売していたのが日本トップクラスのゼネコン会社だったのですから、もうどうしようもありません。

数年前にも同じように「耐震偽装」のマンションが大きな問題になりましたが、住宅関連の仕事をしている人間からいわせてもらえば、今回の杭データ偽装問題は、耐震偽装とは比べものにならないほどマンション業界に大きな打撃を与えた出来事でした。


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