増築リフォームの事例と費用相場、注意点

増築リフォーム(部屋を増やす)の事例と費用相場、注意点

国交省の統計によると、高齢単身・夫婦の持家世帯で100㎡以上の住宅に住んでいる割合は約58%で、「住宅が広すぎて管理が大変」と回答しています。

他方、4人以上の世帯が100㎡未満の住宅に住んでいる割合は29%で、子育て世帯の4割が居住スペースに不満を抱いています(平成28年度 住宅経済関連データ)。居住スペースのミスマッチは深刻のようです。

ここでは、「あと一部屋欲しい」と願う人を中心に、居住スペースに悩む人々に向け、増築リフォームの基本情報をお伝えしていきます。

事例と費用相場

増築の方法は、現在住んでいる住宅に対して、「上か下に増やす」または「横に増やす」の2パターンしかありません。

「上か下に増やす」というのは、階上増築と地下増築です。「横に増やす」というのは、増築または「離れ」です。以下、それぞれ見ていきましょう。

上に増やす 階上増築

平屋建住宅の二階増築は、比較的容易で、かつてはポピュラーでした。

ですが最近では、平屋(一階建)で新築するという「贅沢な」住宅がなくなり、それに伴い「おかぐら」と呼ばれる二階増築のリフォームもあまり見られなくなりました。

法規的には増築後、一・二階の床面積の合計が、基準法に定められた容積率をオーバーしなければ、問題ありません。構造的には、一階部分の補強の後、増築した二階部分を含めた建物全体の強度が、最新の耐震基準をクリアする必要があります。

しかし、二階建を三階建に増築する場合では、難度が上がります。基礎の強度が問われます。建物の基礎は、二階建と三階建とで要求強度が異なります。二階建の基礎では、三階増築はできません。

実際に行われた三階増築の例を見ると、たとえば、近い将来の高さ制限の緩和を見越して、二階建住宅の新築にあたり、あらかじめ三階用の基礎を設け、規制緩和後に三階増築したという特殊なケースなどです。

さらに階上増築は高コストとなります。なぜなら、増築に先立って屋根を解体し、既存部分の構造の補強や階段室の新設などが必要となるからです。

二階増築が居室のみの場合に比べ、キッチン・浴室など水回りの増築を含むなら、さらにコストがはね上がります。あえて費用相場を示すなら、120~200万円/坪といったところでしょうか。

下に増やす 地下室の増築

都市部の住宅の多くは、狭小な敷地から最大限の居住スペースを得るため、建ぺい率、容積率とも、法定限度いっぱいに建てられています。したがって、増築したくても、その余地が残されていないのが実情です。

そんな都市の増築難民への朗報が、地下増築です。2000(平成12)年、建築基準法が改正され、ドライエリアの設置など一定の条件を満たせば、地下室を居室として使うことが認められることとなりました。

また地下増築については、「住宅部分の延床面積の3分の1を限度として、容積として計算しない」という優遇措置が講じられたため、法令にふれずに居住スペースの拡張が可能となるのです。

地下増築にはいくつか方法が考えられますが、既存の建物を壊したりせず、住まいながら工事ができる点で、「アンダーピニング鋼管圧入工法」を採用したやり方が最適でしょう。

「アンダーピニング鋼管圧入工法」とは、もともとは地盤沈下等の修正に用いられる工法で、具体的には、建物の外周を掘り下げ、基礎の下から短い鋼管杭を継ぎ足しながら、硬い支持層に達するまでジャッキで杭を圧入していきます。

必要箇所の杭打ちが完了すれば、建物は硬い地層の上に自立するので、基礎直下の掘削が可能となり、地下室の施工に移ることができます。

地下増築の費用相場は一概に言うことができません。なぜなら、使用可能な重機の種類や杭の本数など、立地や地盤による不確定要素があまりにも多いからです。

茨城県水戸市で、地盤修正のみで450万円という例があります。

確実なことは、土工事は高コストであること。また、見積もりに先立って地盤調査が必要であり、それにも相当(10~20万円)の費用が生じるということです。

核シェルターについて

北朝鮮による東アジア情勢の緊迫化に伴って、日本でも核シェルターへの関心が高まっています。

人口当たりの核シェルター普及率は、スイスとイスラエルの100%を筆頭に、ノルウェイ(98%)、アメリカ(82%)、ロシア(78%)、イギリス(67%)、シンガポール(54%)となっています。

これに対して日本は0.02%。彼我の危機意識の差は歴然です(日本核シェルター協会調べ)。

核シェルターといえば外国製の地下埋設型を想像しがちですが、国産の製品もあります。日本の実状を考慮し、マンションの一室に設置可能な商品もあり、価格は200万円程度から設置工事ができるようです。

横に増やす 離れ

「自宅の庭に「隠れ家」のような趣味の小屋を持てたらいいな…」こんな夢を抱く人は少なくないでしょう。

母屋の容積率・建ぺい率に余裕があれば、不可能ではありません。あなたの住まいが、郊外の「都市計画区域外」に建っているなら、確認申請不要で小屋を建てることができます。

「都市計画区域」や「準都市計画区域」であっても、防災・準防災地域でなければ、10㎡以内の小屋までは、確認申請は不要です。10㎡とは6畳間程度の広さです。

防災・準防災地域でなく、用途地域が「無指定」であれば、10㎡を超える小屋でも、確認申請は不要です。

横に増やす 増築

建築物はその時々の建築法令や都市計画法に適合するようにつくられます。しかしその後、法が改正されると、不適合となってしまいます。そのような建物を「既存不適格建築」といいます。

「既存不適格」である母屋に、新たに増築しようとする場合、増築する部分だけでなく、母屋も含めて最新の法令に適合することが求められます。

しかし、このような規則は建築主にとって負担となり、増築による快適な住環境の実現を妨げてしまうのも事実です。そこで、いくつかの緩和措置が講じられています。

第一には、「増築部分を母屋と構造的につながず独立して建築すれば、既存部分の適合性については厳密には問わない」という緩和措置です。

独立して建てるなら「離れ」と同じと思われそうですが、少し違います。増築部分は母屋に接してつくられ、接合部分は「エクスパンションジョイント」という稼働部材で繋がれているため、地震などの応力が相互に伝わらない構造となります。

母屋の勝手口や掃き出し窓など開口部を増築部分への通路とすれば、内部での往来も可能です。

第二には、「増築部分の床面積が、母屋の20分の1以下で50 ㎡以下の場合は、増築部分のみ今の建築基準法に適合していればよい」という緩和措置があります。

母屋が延べ床面積40坪の住宅なら、その20分の1は2坪(6.6㎡)、約4畳の大きさです。

リフォームする際の注意点

これまで増築の種類によって、いくつかの制約があることを見てきました。

その理由は、法的な制約を知ることで、施主が業者への見積依頼の前にプランを絞り込む助けとなる知識を提供するためです。

建築基準法を確認する

よい業者は多くの経験から、施主の要望を的確につかみ取ることができます。

そのため施主は、細かな専門知識などなくとも、「現在困っていること」や「どんな生活がしたいか」など、イメージを伝えることで、最良のプランを得ることができます。

しかし、増築にまつわる法的な制約を大まかに知っておくことも、決して無駄なことではありません。なぜなら相談時に、すでに適法な素案が用意されていれば、業者は法外な見積を出しづらくなるからです。

「予算は1000万円です」と知らされて、「でも、このようなプランにすれば、500万円で希望がかないますよ」という、顧客本位のリフォーム営業が、全体の何%いるかは疑問です。

必要な手続き

契約後、実際の確認申請等の事務手続きはリフォーム業者が行います。ただひとつ、施主がしなければならないのは、「検査済証」を準備することです。

「検査済証」がないと、確認申請はできません。つまり、増築が出来ないことになります。

「検査済証」とは、既存建物の建築時の法適合性を証明する書類です。正式には「建築基準法第7条の2第5項の規定による検査済証」と記載されていて、かつては「はがき」大でしたが、現在はA4の大きさになっています。

これと似た書類に、「建築基準法第18条第3項の規定による確認済証」がありますが、それとは異なります。「検査済証」が未交付や紛失などにより、手元にない場合は、あらためて既存の建物について指定検査機関による建築基準法適合状況調査を行う必要があります。

また、増築後は、所有者は1か月以内に「建物表題変更登記」の申請をしなければなりません。実際の申請は、土地家屋調査士に依頼します。

まとめ

増築は、修繕リフォーム等と異なり、第二の新築といってもよいでしょう。そのため、新築時と同じエネルギーを注ぎたくなるものです。

着工後のプラン変更は、業者を混乱させ、コストを増大させるだけでなく、増築の満足度を低下させることにもなります。

「あれもこれも」と実現したい欲求を封印し、「優先順位の第1~2位までの目的を達する」ことを増築の目的にすることが、成功のカギとなるでしょう。

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