住宅においての「廊下」は、家族が毎日行き来するためとても傷みやすい場所なのに、室内に比べて後回しにしがちです。
しかし、玄関から見通せるということで、来訪者が最初に目にする空間でもあります。外観が家の顔なら、廊下は家の素顔ともいえます。ここでは廊下のリフォームについて解説します。
廊下のリフォームのポイント
廊下のリフォームには多彩な選択肢があります。床・壁の劣化を解消する修繕型のリフォームから、床暖房や収納など新たな機能を加える高付加価値型のリフォームまで、予算に応じて自由に発想することができます。
廊下の床のリフォームのポイント
廊下に生じやすいのが歩行による床の劣化です。摩擦によるフローリング表面の「擦れ」、ギシギシという「鳴き」、バウンドするような「緩み」が挙げられます。
特に、階段から降りる床面はくりかえし体重圧がかかるため、緩みや床鳴りが起こりやすい部位です。
「緩み」の多くは、床の仕上げ材をささえる下地の合板や骨組みの劣化で起こります。シロアリが原因のケースもあるため、施工後に追加費用が発生しないよう、事前の検査が必要です。
一方「鳴き」は、下地材が原因の場合と、フローリング材そのものが鳴る場合に分かれます。フローリング材では、「実(さね)」と呼ばれる部位が音の発生源であることが多く、そこにカッターで軽く切りこみを入れることで解消できる場合もあります。
「実(さね)」とは、フローリング材の縁の凸部のことで、相方の部材の凹部に差し込むことで、接合部を不陸なく張り上げるための細工です。
「鳴き」の原因部位が下地にある場合、そこに新しい床材を重ね張りしても解消することはありません。専門家による事前の診断を仰ぎ、根本的な解決をはかりたいものです。
床のリフォームは現在、重ね張りの工法が主流ですが、それまでの段差が解消できるメリットがあると同時に、新たな段差が生じることもあるため、床のレベルへの配慮が重要です。
廊下の壁のリフォームのポイント
廊下の壁に生じやすいのが、経年劣化の他、コーナーの出隅部などに荷物などが当たることによる「擦れ」や「汚れ」です。床に近い部分や窓下に「カビ」や「剥がれ」が見られるなら、結露が原因です。
「カビ」や「剥がれ」は、冬場に暖房で暖められた室内の空気が廊下で冷やされて起きる結露現象が原因で、2階廊下の壁の低い部分や、天窓があればその周辺に多く見られます。
また、クロスの「裂け」は、構造的に弱いドアや窓など建具周辺に多く見られます。原因は地震や風によって家全体が動く影響で生じる症状で、建具左右の縦枠の上端から、天井に向かって亀裂が走るのが特徴です。
軽微ならクロス補修剤で対応できますが、箇所数が多いなら思い切って張り替えるとよいでしょう。
廊下のクロスを張り替える場合、「見切り」の問題が生じます。
クロスは通常、玄関~1階廊下~階段室~2階廊下と連続しています。そのすべてを張り替えるなら問題ありませんが、予算など制約がある場合、張り替える部分と残す部分をどこかで切り分けなければなりません。それが「見切り」です。張り替えたい部分をメインに、違和感のない場所で見切りましょう。
また、将来の手すりの取り付けにそなえ、壁下地の補強をしておくのもよいでしょう。
廊下の床暖房リフォームの考え方
廊下の床のリフォームは、床暖房導入のまたとない機会です。寒い冬の廊下が生まれ変わります。
床の段差が転倒事故の原因となるのと同様、温度差はヒートショックを引き起こします。冬場、暖房の効いた部屋から寒い廊下に出た時の急激な温度変化が、血圧や心拍数に影響を与え、脳梗塞や心筋梗塞など深刻な疾患につながる場合があります。
床暖房のポイントの第一は、熱源を「電気」にするか、「ガス」にするかです。一般に、電気は導入費用が安く、ランニングコストが高い。ガスはこの逆で、導入費用が高く、ランニングコストが安いという特徴があります。使用時間に合わせて、より経済的な熱源を選ぶとよいでしょう。
第二に、発熱体が仕上げ材と一体のものにするか、分離して設置するかです。仕上げ材にこだわらないのであれば、一体型が施工費の節約となり経済的です。分離設置の場合は、床暖房対応の床材を選ぶ必要があります。
いずれにしても、既存の床や下地の状態、施工後の床の高さの変化、住宅の断熱性能、将来のリフォーム計画など、総合的な観点から仕様を選ぶことが大切です。
電熱パネル+床暖対応フローリングの費用は、60,000円/㎡~程度が目安となります。
その他の廊下リフォームのポイント
階段下・壁・天井裏・床下を利用した収納を新しく作ったり、床暖房の設置、常夜灯など照明の追加、猫の爪とぎ用の腰壁など、廊下リフォームの選択肢はたくさんあります。
二世帯住宅化など将来に予想される改修があるなら、工事の重複による無駄な費用負担がないよう、注意深くプランを作成する必要があります。
工事の後に後悔しないよう、よく検討して目的を絞り込むことをおすすめします。
選び方と費用相場
廊下をリフォームする際の壁紙や床材の選び方はどうすればいいのでしょうか?選び方のポイントとリフォームの費用相場についてまとめてみました。
壁紙や床材の選び方
廊下は北側に面していたり、採光が乏しい場合が多いため、クロスや床材の見本からの想像より、暗い仕上がりになる場合が少なくありません。なるべく大きなサンプルを、廊下に実際に置いてみて、判断するとよいでしょう。
また廊下の床や壁は人の行き来で傷みやすい部位です。フッ素や塩化ビニルによって表面処理され、汚れや傷みに強いもの、汚れを簡単に拭き取れるものを選ぶとよいでしょう。
リフォーム費用の相場
廊下リフォームで最も多いのが、床フローリングと壁クロスの交換です。
既存のCF(クッションフロア)やフローリングの上に、新たにフローリングを張り被せる工法なら、10,000円/㎡~(施工費込)。クロス工事は、1,500円/㎡~(同)程度です。
身近になった大理石の内装材
ザルツブルクのミラベル宮殿「マルモーア・ザール(大理石の間)」は、かつてモーツァルトが演奏した広間で、現在では「世界で最も美しい結婚式場」としても知られています。
大理石はその豪華さと輝きとで、比類ない建築素材といえるでしょう。
一般住宅でも、大理石を模した人造大理石や人工大理石は、浴槽やシステムキッチンの天板など、広く普及しています。しかし、これらはあくまでも大理石を模した「大理石調」の素材にすぎません。
人造大理石は、大理石を粉砕しセメントなどで固めた素材です。人工大理石は、アクリルやポリエステル樹脂が主原料で、大理石に由来する素材は含まれません。いずれも素人目にも、本物の大理石とは雲泥の差です。
本物の風合いを持つ内外装材が、「大理石複合パネル」です。これは、薄くスライスした無垢の大理石にFRP・エポキシ樹脂・アルミハニカムなどの基盤で裏打ちして強化した建材です。厚さは3.5mm程度から選べ、安価・軽量で施工性に優れ、床暖房にも対応できるのが特徴です。
廊下のフローリングに大理石複合パネルを上張りした場合の費用は、20,000~30,000円/㎡(施工費込)。もちろん大理石のグレードや、施工面積によって変動します。
注意点としては、大理石やコルクタイルなどの自然素材では、仕上がりの模様が不連続となるのが当たり前。しかし、これがクレームとなるケースが実は少なくありません。完成イメージについて、施工業者に詳しい説明を求めることをおすすめします。