間取り変更リフォームで、新たに壁を作ったり、撤去したりする際の費用相場を解説しています。費用相場は12万~30万円で、工事期間は2~6日程度かかります。
リフォームする際の注意点ですが、採光や通風、換気などを計算して実施する必要があります。ツーバイフォーや木質パネルなど壁式構造の場合、撤去できない壁もあるので注意してください。さらに、マンションの場合は、管理規約が必須となります。
間取り変更リフォームを行う際は、いくつか注意点があるので、しっかり理解しておきましょう。
間取り変更リフォームについて
間取り変更リフォームは、戸建てでは「設備」、「内装」、「外装」に次いで4番目。マンションでは「設備」、「内装」、「建具」、「収納」に次いで5番目と、高い比率で実施されている工事です。
※平成26年度 第12回住宅リフォーム実例調査 住宅リフォーム推進協議会
しかし一口に間取り変更といっても、少額の壁撤去工事から、1000万円超のスケルトン・リフォームまで、その内容は多種多様。加えて、少額の壁撤去でさえ、構造の問題を避けて通れないという難しさがあります。
そこで、ここでは間取り変更の基本である壁の新設・撤去工事で留意すべきポイントと、予算組みに役立つ費用相場について解説します。
「リビングを隣の部屋とつなげて広く使いたい」
「一部屋を壁で間仕切って二つ子供部屋をつくりたい」
「二世帯住宅仕様に間取りをすべてつくり変えたい」
など、考えている人は、参考にしてください。
費用相場
間取り変更リフォームは、壁を新設したり、壁を撤去する工事が基本となります。予算組みにおいても、壁の撤去・新設を基本とし、その上にオプション工事を積み上げていく方法が適当です。
壁を作るケース
実際に、材料原価と建築工の賃金から、どのように壁新設の工事価格が形成されるのかを見ていきましょう。ひとつの部屋を壁で間仕切って、ふたつの個室に分割する工事の費用について検討してみます。
まずは材料原価についてです。
新設する壁を幅2間(3.6m)、高さ2.4mとして材料費を積算してみました。仕様は、ツーバイ材を455ピッチの木軸とし、金物、石膏ボード(9.5mm)、量産ビニールクロスの仕上げで約20,000円です。
次に人件費についてです。
工事に要するのは2日。第1日目は大工2名、第2日目に内装工1名、計3人工(にんく)として計算してみます。人工とは、1人の建築工が1日でこなす作業に相当する賃金、つまり日当で、工種にもよりますが1人工2~3万円が相場です。
計算は間を取って1人工25,000円で計算してみると、
1日目は2人工で50,000円
2日目は1人工で25,000円
3人工合計で75,000円になります。
リフォーム会社を通さないで、自分で材料や職人を手配すれば、上記の値段ですが、手間隙を考えると、リフォーム会社を通すケースが多いです。そうなると、リフォーム会社の利益を上記の加える必要があります。
75,000円にに元請けの利益が上乗せされます。元請けの粗利益を30%とすると、
95,000÷0.7=約136,000(税別)×1.08=146,880円(税込)
これが、おおよその目安となります。2間(3.6m)の壁の新設の費用相場は12~17万円あたりではないでしょうか。
壁を撤去するケース
壁の撤去の総工事費用を左右するのは、撤去工事そのものよりも、撤去後の施工ボリュームです。
間仕切り壁を解体すると、床・壁・天井には、それまで壁に隠れていた、仕上げ材も下地もない部分が顕れます。その部分のみ補修するのか、そこを含め部屋全体をやり替えるのかで、費用は大きく異なります。
内部仕上げの同一な2室をつなげるケースでは、最小限の補修で対応できます。しかし、例えば和室と洋室といった異なる仕様の2室をつなげるケースで、統一感を求めるなら一定の費用を見込まなければなりません。
また、解体後に露出した部位に腐食や蟻害などが判明した場合は、追加費用が発生することがあります。すべて解体を伴うリフォームには「壊してみて初めて分かる」ことがあり、予測不能の事態なら、業者の瑕疵を問うことはできません。予備費など、余裕をもった予算組みが必要です。
基本的なケースとして、在来(木質軸組み)工法の住宅の、2間(3.6m)の壁を解体する工事について見ていきます。壁は耐震上は撤去可能、つなげる2室は同一の内部仕上げの洋室と仮定します。
工事に要するのは4日+予備日2日。この予備日は、解体する壁の中の電気配線の切りまわし、解体後の床・壁・天井の取り合い部の状況、つなげる2室の床の段差など、不測の事態に備えるためのものです。
間仕切り壁の解体後、取り合い部の下地をつくり、床は見切り材で補修、壁はクロス貼りとした場合の工事価格は、15~30万円というところでしょうか。間仕切り解体工事は、現場によって無数のバリエーションがあるため、一概に相場価格を提示できないのが実情です。
ここまで、壁を作る場合と撤去する場合の費用相場を解説してきましたが、できるだけリフォーム費用を安くしたい人は、なるべく多くの会社の見積もりを比較するのがポイントです。
理由は会社によって得意不得意があって、間取り変更が不得意な業者に依頼してしまうと費用が高くなり損するからです。
工事期間
工期は、上述のとおり、壁新設で2日、壁解体で4~6日ですが、これは、あくまでも壁工事のみの工期です。壁新設の場合では、オプション工事として、幅木・廻り縁の修復、電気工事、換気や空調の新設などが加算され、工期が増減します。
壁撤去の場合では、最小限の補修のケースから、ひとつづきの空間を全面的に改修するケースまで、多様な選択肢があり、工期もレベルに応じて増減します。
間取り変更リフォームの注意点
間取りを変更すると、既存の照明やスイッチ・コンセント類の位置、エアコンなど空調機器の容量に不都合が生じることがあります。新たな動線に対応した配置を事前に検討することが大切です。
採光や通風、換気にも配慮が必要
人の移動を示す「動線」があるように、室内に射し込む光や、通り抜ける風にも固有の通り道「光と風の動線」があります。新たな間取りが、それまでの快適な採光や通風を損なわないようにしたいものです。
平成15年(2003年)に施行された建築基準法に基くシックハウス対策に係る法令では、建材が発散するホルムアルデヒドによる衛生上の支障がないよう、必要な換気設備の構造や方法を定めています(国土交通省告示第274号)。
この法令の下で設計された住宅は、各室に換気装置が取り付けられています。そのため部屋を分割すると、換気装置が一部屋に偏り、他の部屋の衛生環境が損なわれるので、新たに給排気装置が必要となる場合があります。
撤去できない壁がある
壁を撤去する前に、撤去してもよい壁か、一部を残す必要があるのか、専門家による構造の検証が必須です。
ツーバイフォーや木質パネルなど壁式構造の戸建て住宅では、耐力壁を動かすことはできません。在来(木造軸組み)構造の建物は基本的に壁の撤去が可能ですが、筋交い(斜めに交わること)があれば、その部分は袖壁(そでかべ)として残さなければなりません。
鉄筋コンクリート(RC)造のマンションでは、骨組みがある「ラーメン構造」であれば壁の撤去ができますが、柱や梁がない「壁式構造」では戸建てと同じく、耐力壁を動かすことができません。撤去できるのは耐力に関係のない雑壁のみです。
耐力壁と雑壁の見分け方は、壁の厚みで見当をつけることができます。建築基準法では、耐力壁は12cm厚以上と定められているので、12cm未満なら雑壁と判断できます。もちろん、専門家による最終的な判断を仰ぐべきは言うまでもありません。
鉄筋鉄骨コンクリート(SRC)造のマンションなら、インフィル(構造躯体を除く居住部分)をすべて撤去して、新しく間取りをつくりなおすスケルトン・リフォームが可能です。
マンションは管理規約を確認
マンションは、区分所有法に基く「管理規約」を独自に定めています。目的は、施設の管理や使用について区分所有者相互の利害を調整し、良好な住環境を確保するためです。
この「規約」のなかでリフォームに関係するのは、『専有部分の範囲』や『専有部分の修繕等』について定めた項目です。
専有部分の範囲では、「専有部分とは、躯体部分を除く天井、床及び壁や、玄関扉の錠と内部塗装部分である」ことや、「窓枠・窓ガラスは専有部分に含まれない」ことなどが記載されています。区分所有者がリフォームできる範囲は、専有部分に限られます。
専有部分の修繕等では、「専有部分の修繕や模様替えは、理事長の事前承認が必要」であることなどが定められています。また、床材の遮音等級など、使用する建材の性能について細かく指定されている場合は、それらに従わなければなりません。
補足ですが、工事に先立つ近隣への挨拶は思いのほか重要です。挨拶先は、戸建てであれば「向こう三軒両隣」ということになりますが、マンションでは、真上、真下、両隣の計4世帯の住戸が基本です。
必須ではありませんが、この挨拶は業者まかせでなく、施主自ら個別に訪問することをおすすめします。マンションの近隣トラブルはこの上下左右との間に生じることが多く、この機会にコミュニケーションを持つことで、その後の関係が円滑化します。
全住戸への工事広告は、通常はロビーやエレベーター内への文書の掲示によってなされます。ただし、マンションによっては、「規約」のなかで、「工事の部屋番号と工事内容」「工期」「緊急連絡先」などの記載項目や、掲示場所を定めている場合があるため、確認が必要です。
施工内容だけでなく、近隣対策についても業者と打ち合わせをしておくとよいでしょう。図面や規約は管理人室に保管されていますので、閲覧することができます。疑問があれば、管理組合に問い合わせることをおすすめします。