冬になると、暖房のある部屋から動きたくなくなります。廊下やトイレ・洗面・お風呂は寒いままだからです。暖房のきいた部屋と暖房のない部屋の温度差は身体にとても負担です。
冬の家の中を今までより暖かくする「断熱材リフォーム」は、どうして断熱するのかを知ると「省エネ」な家、「夏も快適」な家になります。断熱材リフォームを解説します。
断熱材を選ぶ基準
断熱材リフォームで断熱材を選ぶ際、2つのことを検討しましょう。「断熱材の性能」と「断熱材の施工方法」です。
断熱材の性能
断熱材の種類は、いろいろな素材と断熱性能で多くの種類があります。リフォームする家の地域にあった性能をもつ断熱材を選ばなければなりません。
住宅でよく使われている断熱材の素材は、グラスウール・羊毛断熱材・セルロースファイファー・ポリスチレンフォームなどがあります。それぞれ、素材の特性・施工性・価格を検討して選ぶことになります。
断熱材の断熱性能値は、おおまかにいうと「断熱材のそのものの断熱性能値×厚さ」で決まります。
例をあげると、10㎝の壁厚に断熱材を入れる場合、同じ厚みでも性能値が高い断熱材をいれれば、より高断熱な住宅になります。反対に同じ性能値の断熱材でも厚みを厚くすれば、より高断熱な住宅になります。
ここで気を付けたいのが、「断熱性能のオーバースペック」です。オーバースペックは、必要以上の性能でよりお金がかかります。必要な断熱性能を満たす断熱材を選ぶには専門知識が必要です。断熱に詳しいリフォーム会社や設計者に相談するのが良いでしょう。
断熱材の施工方法
断熱材は正しい施工をすることで、製品に記されている性能が得られます。また、断熱工事には防湿の考え方が重要になり、その施工方法もよく検討する必要があります。
断熱材の施工方法は、家の構造やリフォーム範囲により違います。施工会社に相談しましょう。
断熱材リフォームの目的
「高気密高断熱住宅」。聞いたことがあるのではないでしょうか?
むずかしそうですが簡単にいうと、「すきま風が少なくて、外の温度の影響が少ない家」。外からはいってくる風が少なくなるようにすき間を減らします(気密を高くする)。また、冬でも家の中はあたたかくなるように、断熱性能を高くします。
断熱材リフォームの目的は、冬暖かく夏涼しい家にすること。冷暖房のない部屋とある部屋の温度差を少なくすることにあります。断熱材リフォームをすることで室内環境が改善されて家にも人にも快適な家になります。
温度差の少ない家はヒートショックを防ぐ
「ヒートショック」とは、急な気温の差がおこることで、血管が収縮して、血圧が急変動し、身体的影響がおこります。動悸が早くなる、失神、脳梗塞、脳溢血、心筋梗塞などで高齢者や血圧が高い人にはとても危険です。
ヒートショックがおこるケースは、入浴中、夜のトイレ、就寝中などです。
冬の夜トイレでは、布団の中(23℃)→寝室(15℃)→廊下(8℃)→トイレ(8℃)となり、身体にはとても負担です。入浴の場合は、服を脱ぎますのでもっと負担となります。
断熱材リフォームをすると、家中の温度差が少なくなりヒートショックを防ぐことができます。また、夜のトイレでの「寒くていやだなぁ」がなくなります。お子さんの「寒いからお風呂はいるのいや」が減ります。
結露を防ぐ=健康に良い家
冬の朝、カーテンやサッシ・窓枠についた結露は早く拭かないとカビの原因や壁紙のはがれにつながります。結露は、暖房で温まった空気が冷たい空気で冷やされることで起こります。
カビは壁体内で発生していることもあります。喘息やアレルギーなどの健康にも影響をあたえます。窓の性能にもよりますが、断熱材リフォームをすることでカーテン・サッシ・北側のタンス裏にできる結露を防ぐことができます。
省エネの家
断熱材リフォームをすると外気温の影響が減るため、冷暖房費がかからない家(省エネ)になります。まったく冷暖房をつけなくてもよくなるわけではありませんが、冷暖房が必要な期間・時間が短くなり、運転時のパワーも小さくてすみます。
断熱材リフォームは身体に良いだけでなく、経済的にも良い効果が得られます。
断熱材の厚さ
断熱材の厚さは、リフォームする地域や家の構造・求める性能値・断熱材の種類、施工する部位によって違います。
東京23区の一般的な例をあげます。
- 家の構造:木造軸組み工法
- 断熱性能値:断熱性能4等級
- 床:断熱材ポリスチレンフォーム3種b 厚さ55~65mm(商品による)
- 壁:高性能グラスウール16K 厚さ90mm
- 天井:高性能グラスウール16K 厚さ160mm
- 参考資料:住宅支援機構HPより http://www.flat35.com/files/300200679.pdf
断熱材の厚さは、一概に「何mmで大丈夫です」とは言えません。必ず、断熱に詳しい専門家に相談しましょう。
断熱材リフォームといっしょに考えたいリフォーム
断熱材リフォームをする時には、他にも高気密・高断熱に効果がある工事を検討しましょう。
内窓をつける
築年数が経ってくると、圧死や窓ガラスからのすき間風や冷気が気になります。特に寝室で窓下に寝ている場合は効果があります。内窓は、今あるサッシの内側にもう一つサッシをつける工事で、気密・断熱が高くなります。工事も一日で終わるのでおすすめです。
お風呂をあたたかくするには
お風呂に入る時には服を脱ぐため、より寒く感じます。また、タイルのお風呂はユニットバスと比べると寒く、タイルも冷たいため歩くのもいやなものです。
お風呂を温かくするには、脱衣所兼用の暖房器具をつける方法があります。ユニットバスにリフォームすると、とてもあたたかくなります。
玄関の冷気をシャットアウトするには
廊下が寒い理由は、玄関からの冷気にあります。気軽な解決方法の一つは、玄関と廊下の間に建具をつけることです。間取りによりますが、建具一つで変わりますので検討してみましょう。
補助暖房をつけられるように
水廻りは家の中でも北側に配置されている間取りが多いものです。リフォームの時にコンセントを増やしてもらいましょう。ヒートショック対策に、タイマー付の小さな電気ヒーターが売られています。どうしても寒い日には補助暖房が使えるようにしておきましょう。
高気密・高断熱の家の暮らし方・注意点
「日本の家は夏を旨とすべし」と徒然草に書かれているように、日本の気候の特徴は「夏の高温多湿」にあり、風通しの良い家が良しとされてきました。しかし、現在では気候の変化やヒートショックなどの身体的影響を考え、高気密高断熱の住宅が増えています。
高気密高断熱の住宅では従来と違った住まい方に注意が必要です。
- 開放型ストーブの使用は控え、使用する場合は定期的に換気する。これは、一酸化炭素中毒を防ぐためです。
- 観葉植物や水槽がある家では、室内の湿度が高くなるため定期的な換気を行いましょう。
- 冬、卓上コンロで鍋物をする時は、必ず換気扇を使いましょう。
- 夏の外出時は、カーテンを閉めてでかけると、窓からの温度上昇を抑えることができます。
高断熱・高気密にするリフォームをした時には、これらに注意しましょう。また、工事会社に暮らし方で注意することはないか聞いておきましょう。
断熱材リフォームの料金相場
断熱材のリフォーム工事は、施工難度により工事プランが変わります。
床下断熱と天井断熱は比較的施工が容易なため、一緒に行うことが多い工事です。
しかし、壁断熱の工事は壁を構造体にして行う大掛かりなため、壁断熱を行う場合は床下、天井断熱もセットで行うケースがほとんどです。
木造在来工法の場合
- 床下の断熱工事(施工面積50㎡以下) ¥400,000~
- 天井・床下の断熱工事(施工面積50㎡以下)¥600,000~
- 天井・壁・床下断熱の工事(施工床面積50㎡以下・総2階)¥1,000,000~
断熱材リフォームの工事金額は、家の構造や施工方法により大きく変わってきます。目安の金額でできない場合もあります。2社以上で見積もりをとり比較しましょう。その際、同じ断熱材で見積もりをしてもらい、施工方法を確認しましょう。
その他断熱工事
- 内窓取付(腰窓1ヶ所 標準工事費込)¥45,000~
- 内窓取付(掃出し窓1ヶ所 標準工事費込)¥67,000~
- 床下収納庫を断熱タイプに交換する ¥20,000~
- コンセント新規追加 ¥8,000~
- 廊下と玄関の間に新たに建具取付 ¥50,000~
断熱材リフォームは、地方公共団体などから補助金がもらえる場合もあります。補助金をもらうには指定の工事・工事会社で決められた期間に工事行う必要があります。施工会社に相談しましょう。
断熱材リフォームは見た目が変わらない工事がほとんどですが、工事後の快適さや安心感は満足度の高いリフォームの一つです。
これから両親と同居する予定がある、家族に心臓疾患がある、おおがかりなリノベーションをするなどのケースはぜひ「断熱材リフォーム」を検討しましょう。