手付金とローン特約のリスクを理解しておく

手付金とローン特約のリスクを理解しておく
売買契約後でも、手付金リスクとローン特約リスクがある

買主も無事きまり、契約も済んだからといって安心はできません。不動産の売買では、契約そのものを破棄できる特約がいくつもあります。今回はその中でも一番気をつけておきたい「住宅ローン特約」と「手付け放棄による解除」の話です。

手付け放棄による解除だったり、ローン特約という言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。これらの特約は不動産売買では、ぜったいに知っておかなければならない特約制度でもあり、売主のリスクに繋がる可能性があるので、必ずその内容を把握しておきましょう。

今回はこの2つのリスクについて、わかりやすく解説していきます。

手付金の額が大きければ、それだけ売主のリスクも大きくなる

契約時には、買主側から売買代金の一部(手付金)を受け取ることになるのですが、この額は大きければ大きいほど良いと思っていませんか?もしそう思っているのでしたら、それは少し危険ですね。

手付金の額は多いほど良いのか?

たしかに手付金として10万円受け取るより、100万円や200万円払ってくれるほうが、この人は本気で買いたいと安心できますよね?その気持ちは充分理解できます。しかし、手付解除というシステムを理解しておかなければ、売主にも大きなリスクとなる可能性があります。

そもそも手付金を何のためにもらうのかご存知でしょうか?

よく言われるのが「買います」という意思表示のためです。たしかにその意味合いもあります。口先だけで買うと言われても信用できない部分がありますよね。そのため予約するという意味合いで先に手付金として支払うというのが一般的な考え方です。

さらにひとつお尋ねしたいのですが、「手付け解除」という言葉をご存知でしょうか?
手付け解除とは、支払い済みの手付金を放棄するかわりに、契約そのものを白紙に戻すことができる制度のことです。

つまり、「買います」という約束をしていたにも関わらず、買主側の一方的な理由で契約そのものを反故にする際、買主は支払っていた手付金を放棄するかわりに、契約の解除が認められるという制度のことです。

これだけを考えれば、簡単にキャンセルさせないためにも、手付金の額は多めにもらっておいたほうが良いと考える人も多いでしょう。

しかし、この手付け解除というシステムは、何も買主側だけが負う制度ではありません。

売主都合でのキャンセル時は手付金の倍返し

売主側の一方的な理由で契約そのものを破棄したい場合も同じように、手付け解除をすることになります。でも売主側は買主から手付金を受け取っている側なので、何を放棄するの?と思うかもしれませんが、実は買主よりも重いペナルティを売主側は背負っていることになります。

売主側の一方的な理由で契約を破棄する場合、買主から受け取っていた手付金の2倍を買主側に支払うことになります。俗にいう「手付金の倍返し」です。

ですので、欲を出して手付金300万円を要求していた場合、万が一売主都合で契約をキャンセルすることになると、手付金300万円を返還し、さらに同額300万円を支払うので、合計すると600万円を買主側に支払わないといけません。

このような決まりがあることを理解した上で手付金の額などを決めておかなければ、万が一のときに大きなダメージを受けることになります。

ローン特約で契約が白紙となるケースは少なくない

一旦売買契約が終わると、売主も買主も簡単にはキャンセルができないのは、手付け解除の話で理解頂けたと思います。

しかし、ローン特約のように売買契約後であっても、無条件で契約がキャンセルできるというシステムもありますので、契約が終わったからといって安心しないようにしましょう。

ローン特約とは?

買主の多くが住宅ローンを利用すると思いますが、ここで気をつけておかなければならないのが「住宅ローン特約」という制度です。買主が住宅ローンを利用する場合、ほぼ間違いなくこの「住宅ローン特約」のことが契約書に書かれています。

住宅ローン特約とは?

売買契約後であっても住宅ローンを借りることができなければ、無条件で契約を白紙に戻すことができるという制度のこと。

無条件なので、手付け解除みたいな違約金だったり、ペナルティは発生しません。
あまりにも買主側よりの制度なのですが、これはほとんどの不動産売買に適用される制度でもあります。

住宅ローンの進捗状況は必ず確認する

住宅ローン特約のリスクを解りやすく例題で解説していきます。

例)AさんとBさんの2組が、あなたのマンションを買いたいと申し出があったとします。AさんのほうがBさんより購入金額の条件が良かったので、Aさんと売買契約を交わすことにしました。

しかし、その1ヵ月後にAさんの住宅ローンが審査で不可となってしまったので契約を破棄したいと不動産業者から連絡がありました。そこでBさんに慌てて連絡を取ってもらったのですが、すでにBさんは他の物件を購入することが決まっていました。

ここで問題だったのは、AさんとBさんから買いたいという申し出があったとき、両者の住宅ローン状況を確認せず、購入金額だけでAさんに決めてしまったことです。

最初に申し出があった時点でAさんは住宅ローンの話は何も決まっていませんでしたが、Bさんは既に仮審査を通過していました。この住宅ローンの進捗状況を最初に確認しておけば、安易にAさんに決めることは無かったかもしれません。

手付金は、なるべく使わずに持っておく

手付け解除やローン特約で一番怖いのが、受け取っていた手付金を使い込んでしまっているケースです。ローン特約で契約そのものがキャンセルになった場合、売主は受け取っていた手付金を全額返還しなければなりませんし、売主都合でのキャンセル時も同様です。

不動産売買では何が起こるかわからないので、受け取った手付金は決済と物件引渡しが終わるまでは、なるべく手をつけないようにすることをおすすめしておきます。


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