ホームインスペクションとは人間でいう健康診断のことです。今のその家の現状を専門業者に調査してもらい、問題点や解決策を明確にすることが目的です。日本ではあまり馴染みのない制度ですが、アメリカなどの諸外国では当然のように行われているサービスなので、今後日本でも急速に広まっていく定番のサービスになると思っています。
ついにホームインスペクションの義務化が始まりました。この制度が始まったことで今後中古不動産の売り方や買い方が大きく変化することが予想できます。
そこで今後中古不動産の売買において欠かせないポイントになるであろう「ホームインスペクション」について、今回は詳しく解説していきたいと思います。
ホームインスペクションって何?
ホームインスペクションとは日本語訳すると「住宅診断」となります。
つまり、不動産売買にまったく関係がない第三者的立場の専門業者が、公平にその物件の劣化状況や欠落箇所の調査を実施し、それらの詳細を報告書にまとめてくれる家の健康診断だと思ってください。
建物の劣化状況、シロアリ被害、耐震性能、雨漏り被害など、住宅を総合的に診断してくれます。また売買後に何かしらの不具合が発生した場合でも、瑕疵担保保険で補修や修繕を行うことができるので、売主と買主のどちらにとってもプラスになることが多い制度です。
- 欠陥住宅ではないか?
- いつごろ?どこに?どれくらいの費用がかかる?
- あと何年くらいもつのか?
- リフォーム対応可能か知りたい
- リフォームの選択肢をいろいろと知りたい
- 防犯対策に関するアドバイスなど
調査報告書のサンプルをご覧になりたい方は以下のURLを参照して下さい。
http://www.sakurajimusyo.com/wp-content/uploads/2014/04/report-mansion-attendant1.pdf
(※株式会社さくら事務所さんのHPより)
以前からこのようなサービスはありましたが、インスペクションを受ける費用などの問題もあり、あまり一般的には普及しなかったというのが現状です。
しかし今後建物の老朽化進んでいる戸建て住宅や分譲マンションの市場取引が増加することを想定し、不動産売買のトラブルを最小限に抑える効果があるとして、2016年5月の国会で「ホームインスペクションの告知義務化」が決定しました。
ただし誤解しやすいのですが、今後かならずホームインスペクションを受けることが義務化された訳ではありません。あくまでも告知報告が「義務化」されただけです。
つまり、今後中古マンションなどを売買するときには、契約書内に必ず「ホームインスペクション実施済み」なのか「ホームインスペクション未実施物件」なのかを表示することが義務化されただけです。
ですので、ホームインスペクションを実施していない中古マンションであっても、契約書に「ホームインスペクション未実施」と記入してあれば法律的にはまったく問題ではありません。
告知義務化だけでも効果は十分にある
本来であれば全物件にホームインスペクションの実施義務化が一番ベストだと思うのですが、今回の告知義務化だけでもその効果は十分に期待できると管理人は思っています。
告知の義務化が決まったことで、今後の中古不動産の売買では必ずホームインスペクションという言葉を聞くようになります。当然売主も買主も「ホームインスペクション」について担当者に尋ねたり、自分でネットを使って調べたりするはずです。
そうすることで「え?こんな制度があるんだ!」とか「これは自分の物件でもぜひ実施してもらいたい」と考える人が増えてきます。つまりホームインスペクション(住宅診断)という制度を広く認知してもらうことができる良い機会になると思っています。
阪神大震災、東北大震災、そして耐震偽装などにより今はほとんどの人が不動産を購入するとき「耐震制度」や「耐震基準」について物件を調べます。
ですが、わずか10年ほど前までは耐震基準なんて気にしてマンションを購入する人はほとんどいませんでした。今後同じようにホームインスペクションというのが不動産売買において当然のようになっていくことを管理人は期待しています。
今は中古マンションを探すときインターネットのポータルサイト(SUUMOやHOME'Sなど)を利用する人も多いと思います。そんなとき便利なのが、詳細を指定して該当する物件だけを検索する機能ですよね。
例えば○○駅から徒歩10分圏内の物件だけに絞って検索したり、新耐震基準後に建てられた分譲マンションだけに絞って検索することもできます。
同じようにホームインスペクションを実施している中古物件だけに検索できるようんある日もきっと来るでしょう。そうなればホームインスペクションを実施してないというだけで、買主側の候補から漏れてしまうことになり、売主側としては顧客を逃してしまう可能性が高くなります。
管理人の調べでは2016年12月現在で、この「ホームインスペクション」を検索対象にしている不動産ポータルサイトはSUUMOのみですが、今後他の不動産ポータルサイトも同様の仕様に変更することは十分に考えられます。
ホームインスペクションの所要時間と料金
ホームインスペクションをお願いするとき、調査にどれくらいの時間が掛かり、いったいどれくらいの費用を請求されるのか不安ですよね?
調査時間、調査内容、調査料金は基本的に依頼する企業によって異なるというのが現状ですが、一般的な目安としてお伝えするなら以下のような感じになります。
調査時間
おおむね一戸建て住宅で3時間~4時間程度、分譲マンションで2時間~3時間程度
調査内容
日本ホームインスペクターズ協会のHPを参考にしてください
(https://www.jshi.org/what/what04/)
調査費用
基本調査50,000円~70,000円、総合診断100,000円~150,000円
調査費用は誰が払うの?
このホームインスペクションで問題となりがちなのが、いったい誰が調査費用を負担するのか?ということです。
一見すると売主のように思われる方も多いようですが、実際には売主・買主・不動産仲介業者など、だれが負担するのか?というルールのようなものはありません。ケースバイケースによって、調査費を負担する人が違ってくるようです。
もしわたしが不動産会社の担当者という立場だったとしたら、売主と買主に調査費用は折半してもらうように説得すると思います。
売主にとっても瑕疵担保責任の不安を解消したり、早期売却が可能になるという大きなメリットがありますし、買主側としても安心して購入できるという最大のメリットを得ることができます。
一時的に売主が調査費用は全額立て替えておき、売買契約の際に調査費用の半分を買主から頂戴するというのが一番しっくりくるように思います。
それと実は不動産仲介会社が調査費用の全額を負担するというケースも珍しくありません。
仮に3,000万円の中古マンションを仲介した場合、不動産仲介会社には仲介手数料として約200万円ほどの利益が入る計算になります。それであればインスペクションの調査費用くらい支払っても十分に元は取れますよね。
ただし不動産会社に調査費用を出してもらう場合は、専属媒介契約などの条件を出されることになると思いますので、そこは後々のことまで良く考えておくようにしましょう。例え不動産仲介業者が全額調査費用を負担してくれると申し出てきても、後々それがネックになることもありえます。