シックハウス症候群の原因と症状、有害物質を含む資材

シックハウス症候群の原因と症状、有害物質を含む資材

「健康住宅」や「無添加住宅」など、健康面での優位性を押し出しているハウスメーカーは数多くあります。数千万円という高い買い物となるので、健康を害してしまっては元も子もありません。

そこで今回は、シックハウス症候群や有害物質について解説をするとともに、その悪影響を及ぼす可能性のある有害物質をどう対処すれば良いか説明します。

シックハウス症候群とは

シックハウス症候群(Sick House Syndrome)とは、直訳すると「病気の家症候群」ということで、居住者の健康を維持するという観点から、問題のある住宅において見受けられる健康障害の総称を指します。

シックハウス症候群の原因

シックハウス症候群の主な原因は、建材や家具などに含まれている化学物質が発散する有害なガスです。代表的なものとして、合板の接着材や塗料、防腐剤に使われるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレンなどがあります。

その多くは、揮発性物質で、気温が高くなるにつれて発散量が増加するため、この季節には室内の化学物質濃度が高くなります。また、湿度も高くなる季節なので、カビやダニなどによるシックハウス症候群も多くなります。

シックハウス症候群には様々な発症の原因がありますが、特に下記の3条件が揃うと発症しやすいと言われています。

シックハウス症候群の発生要因

  1. 室内にカビ、ダニなどの原因物質や有害な化学物質が存在する
  2. 室内の気密性が高い
  3. 換気の頻度が少ない、または全くしない

このうち①は直接的な原因、②は住宅の性能向上によるもの、③は生活習慣によるものです。

シックハウス症候群の症状

厚生労働省から発表されている「室内空気質健康影響研究会」の最新報告(2004年2月)によると、シックハウス症候群の典型的な症状は下記の用に記載されています。

シックハウス症候群の典型的な症状

  • 皮膚や目、のどの異変
  • 目がチカチカしたり、のどが痛くなる

  • 全身の倦怠感、頭痛、頭重、めまいなどの不定愁訴

また、化学物質過敏症との関連も報告されています。こうした症状は、新築の家の場合に特に注意が必要ですが、壁紙や床板のリフォームをした後やタンスやテーブルなどの大型家具を新たに置いた際にも注意が必要です。

目・のどの不調や皮膚疾患など、原因がわからない体調不良が続く場合には、シックハウス症候群を疑ってみましょう。

予防方法と治し方

シックハウス症候群の予防や軽減には、窓開けと換気が基本となります。近頃の住宅は一戸建てやマンションいずれにしても、気密性が非常に高くなっており、化学物質などが蓄積しやすい環境となっています。共働き夫婦や単身者の場合には、一日の半分以上の時間、部屋が閉め切り状態となっていて換気ができていないということも少なくありません。

帰宅時には室内の化学物質の濃度が非常に高くなっています。また反対に、お年寄りの場合には丸一日自宅にいることも多く、長時間にわたり化学物質の影響を受けることになりますので、窓を閉め切っていると特にシックハウスを発症しやすい状況であると言えます。

こうした室内環境を改善するために、できるだけ換気をすることが大切です。朝起きた時と帰宅したときに必ず窓を開けて、換気扇を回すことを習慣とすることが大切です。

また、エアコンをつけても換気にはなりませんので、注意しましょう。ほとんどの家庭用エアコンは室内の空気を循環させるだけのタイプです。

カビやダニの予防は、こまめに掃除することです。絨毯や畳は掃除機でしっかり掃除をする、バスルームや洗面所の水滴はきちんとふき取る、といった基本的な掃除をして常に清潔にしておくことが対策の基本となります。

有害物質を含む資材や材料について

有害物質を含む資材や材料は数多くあり、少しでも人体に悪影響を及ぼす建築材料をすべて紹介すると膨大な量となってしまいますので、代表的なものを紹介します。

塗料や接着剤に含まれるホルムアルデヒド

「ホルムアルデヒド」は代表的な有害物質です。建築資材にも人体に有害とされる化学物質が多く使用されています。その中でも現在最も問題視されている物質は、この有害物質で人体にあらゆる害があります。ホルムアルデヒドは法律によって使用制限がありますが、現在も未だにほとんどの住宅に少なからず使用されています。

ホルムアルデヒドが人の体に与える影響としては、喘息、気管支炎や皮膚疾患などが有名ですが、発がん物質であることも判明しています。

可塑剤(塩ビクロス)

壁紙の90%はビニールクロス(塩ビ壁紙)です。塩ビの問題がクローズアップされてもなかなか減ることはありません。なぜ問題とされているかというと、ビニールクロスを製造する際には、原料となる塩化ビニルが柔らかくなるように、可塑剤という油を使用します。

さらに、難燃剤・発泡剤・着色材・溶剤・防カビ剤・充填剤などが添付されています。これらが揮発する可能性があります。これらの原料を紙に吹き付け、パンを焼くように発砲させできた原反に、エンポスロールで型をつけプリントするとビニールクロスが完成します。

ビニールクロスは紙一枚分の厚さしかないので、簡単に破れます。しかし、いくら薄くても素材がビニールなので湿気を吸放出する機能はありません。

アスベスト

高濃度のアスベストを、長期間、しかも大量に吸い続けると、アスベスト肺やじん肺、中皮腫になる可能性が高くなるといわれています。アスベスト吸引によって病気を引き起こすのは、アスベストの非常に鋭利な先端がDNAを傷つけるからだといわれています。

ただ、アスベストで病気になる原因が科学的なものではなく、物理的な問題であるということははっきりしています。アスベストは断熱や吸音、耐久性を高める面では、非常に優れた性能を持っています。

それらをのこぎりで切ったり、サンドペーパーでこするといった、繊維を発塵させるようなことをすれば問題ですが、形状が吹き付けでない限り、アスベスト建材であっても問題ありません。

トルエン・キシレン

トルエンやキシレンは、塗料や樹脂などの建材の溶剤として用いられており、それらが室内に放出されることがあります。そのため、シックハウス症候群の原因の一つとされています。

グラスウール・ロックウール

「グラスウール」と「ロックウール」は断熱材として頻繁に使用されますが、この材料も問題があります。多くのハウスメーカーでは高気密高断熱住宅を売りにしており、高気密高断熱住宅が広く普及しています。そこで注目されているのが、断熱材である「グラスウール」です。

このグラスウールはガラス繊維でできており、他にもフェノール樹脂などの成分が使われています。グラスウールが人の体に及ぼす影響としては、呼吸系の病気の発症や目や皮膚への悪影響です。グラスウールのガラス繊維の粉塵を吸い込むことで発症する恐れがあります。

また、ダニを発生させる温床にもなります。グラスウールがカビに侵食されることで、ダニを発生させてしまい、そうなると人体への影響はさらに深刻で、アレルギーや喘息などのシックハウス症候群を引き起こす恐れがあります。

木材保存剤

過去の木材保存剤の中には発がん性物質や重金属を含むものがあります。これを含む大量の建築廃木材が重大な環境汚染を引き起こすことが懸念されています。しかし、現在使用されている薬剤のほとんどは普通物が用いられているので、基本的には問題ありません。

防蟻剤・防腐薬剤

防腐・防蟻処理は、建物内の木材の腐敗を遅らせて、さらにシロアリの発生を防ぐために行いますが、防腐処理につかわれる薬剤はそのほとんどが有害なものです。その毒性は。皮膚や神経に影響を及ぼすものや、遺伝子レベルで問題を起こすものもあります。

健康に配慮する場合には、たとえ業者から勧められても、農薬などの化学物質による防腐・防蟻処理をしないほうが良いでしょう。

VOC(揮発性有機化合物)

具体例としては、トルエン・ベンゼン・フロン類・ジクロロメタンなどを指し、これらは溶剤や燃料として重要な物質であることから幅広く使われています。しかし、環境へ放出されると、公害などの健康被害を引き起こします。特に最近では、シックハウス症候群の原因物質として広く認知され、問題となっています。

後ほど解説しますが、これらの物質はVOC検査をすることで、どの程度その家が問題を抱えているのかを判断することができます。

電磁波

科学的に実証されていないものにはなりますが、健康に影響があるとする説があります。国連のガンの研究機関(IARC)は、電磁波が子供の発がん作用を高める可能性があると発表しています。電磁波に関する詳しい説明はこの場では避けますので、電磁波がどのように発生するのかは、別途調べていただければと思います。

科学的に実証されていないとはいえ、説明したような不安要素があるのであれば、極力さけるのが無難です。

暖房機器の不備による有害物質

石油ファンヒーターや石油ストーブなどは暖房効率の良い暖房器具です。これらの多くは、開放燃焼型暖房器具が使用されています。しかし、このような暖房器具は、燃料を燃焼して発熱するため、有害ガスが発生します。このような燃焼ガスを屋外に直接排出すれば、室内空気を汚染することはありませんが、一般に開放型燃焼器具の場合は、室内に燃焼ガスが排出されています。

普段から頻繁に使う家電ではありますが、問題も抱えている、ということを認識して取り扱いや対処を行うことが大事です。

有害物質への対策と緩和方法

それでは、ここからは上記で説明をした有害物質との付き合い方、つまり対策や緩和の方法を紹介します。完全に0にする、ということは難しい場合が多いため、あくまでも付き合い方となります。

着工前に住宅会社に建築材料を確認する

家を建てる人は、「製品安全データシート(略名:SDS)」という情報書類を取り寄せることができます。この書類をもらうには、住宅会社や建設会社へ依頼する必要があります。このデータシートには、「それぞれの製品にどのような化学物質がどれだけの量使用されているのか」などの情報が記載されているので、確認をしましょう。

ホルムアルデヒドは、あらゆる建築資材に使用されているため、すべてを排除して家を建てることは難しいです。使用が規制されているため、今では使用されている製品にはどのくらいの量のホルムアルデヒドが使用されているか、一目でわかる表示が義務付けられています。この表示を等級指数というもので表しています。

等級指数は「F☆☆☆☆」という表記で、☆の数で表示されており、この☆の数が多いほどホルムアルデヒドの拡散リスクが少ないとされています。(☆の数は最大で4つ)

有害物質が少ない材料を使う

有害物質が気になる方は、これまでに紹介したような有害物質の少ない材料を使うことをお勧めします。具体的には、無垢材や天然材料を使用することです。その分価格は高くなりますが、住み始めてから後悔するよりは良いと思いますので、住宅会社等に相談してみましょう。

換気しやすい環境づくりをする

上記でも説明した通り、シックハウス症候群の対策には換気が有効です。ただし、風の通りの悪い家となってしまうと、換気がしずらくなってしまいます。風の通りが良くなるような設計としたり、換気扇を多く設けることで、しっかりと換気のできる環境づくりをしておくことが大切です。

VOC検査の実施

VOC検査とは、ホルムアルデヒドやVOC(トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン)の濃度を検査します。検査を実施することで自分の住まいがシックハウス症候群の原因となる可能性があるかの指標となります。このような検査を受けることで、不安を解消することができたり、問題点を解決する材料ともなるので、受けておくにこしたことはありません。

空気清浄機・オゾン発生器・光触媒を使用する

空気中に舞う有害物質の除去やダニやカビなどの除去のために、優れた家電などを使うのも手です。家電メーカーから出ている空気清浄機などは、性能も上がっており比較的安く手に入れることもできます。どれがおすすめか通販サイトのレビューや家電量販店の店員さんに聞いてみるのも良いでしょう。

まとめ

ここまであらゆる有害物質を紹介してきましたが、人体に少しでも影響がある有害物質を挙げればきりがありません。有害物質といっても、程度の問題があるので、一概に全て悪いということはいないのが正直なところです。

そのため、神経質に考えすぎないことも大切なことです。いくら注文住宅だからといっても、すべての有害物質を取り除いた家を建てることは難しいです。皆さんがこれまで暮らしてきた家にも、少なからず有害物質は存在していたはずですので、できる限りの対処は行いながら生活をするのが良いということが個人的な意見です。

それでは、本記事を読んだ方が今回紹介したことを活用して、健やかにマイホーム生活を過ごせることを願っております。


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