空き家が増えており、その問題が深刻化していることはニュースや雑誌で目にしたことがある人も多いでしょう。 しかし、どうして空き家が増え続けているのか、どのように管理・処分するのがベストなのかまでは、あまりよく分かりませんよね。
今回はそんな空き家問題の現状と、考えられる対策などについて解説していきます。
深刻化している空き家問題
空き家が増えていると言われても、あまりピンと来ない人もいるでしょうから、実際にどれくらい空き家が増加しているのかを見てみましょう。総務省では5年おきに住宅・土地の統計調査の結果を公表しています。
平成28年現在、最新の情報として公表されているのは、平成25年度に実施された調査結果です。これによると、現在の空き家数は820万戸で、10年前の平成15年時は659万戸となっています。比較すると、実に161万戸もの空き家が増えていることになります。
日本全国の住宅戸数は、平成25年度で6026万戸なので、7戸に1つが空き家ということになります。この数字は、今後益々大きくなって行くことが予想されています。
その証拠に、平成25年度に新しく建てられた住宅数は、98万7千戸数あるのに対し、同じく平成25年に解体された戸数は、わずか12万7千戸数しかありません。つまり平成25年度だけでも、86万ほどの戸数が増えたことになります。この86万戸数が、まるまる空き家になるとは言いませんが、それに伴い空き家が増えることは明確ですし、売却や賃貸を考えている人にとっても、大きなリスクとなります。
空き家が増え続けることで所有者のリスクが大きくなる理由
空き家が増えるとどなるのか疑問に思いますよね?今現在、大きく分類して以下の4点が懸念されています。
- 周辺住民とのトラブル
- 犯罪の増加
- 需要と供給のバランスが崩れる
- 所有者への負担が大きくなる
1つずつ整理していきましょう。
問題1:周辺住民とのトラブル
やはり真っ先に考えられるのが、空き家になっている周辺住民からの苦情です。放置された古い家には、「倒壊」の恐れがあります。隣近所に、いつ壊れてもおかしくない家があるというのはかなり不安です。
さらに、害虫や野良猫などの棲家になってしまうケースもあります。野良猫が棲みつくと、繁殖てしまって鳴き声やフンの問題が起こってきます。また、こうした古い住宅の大半は木造なので、シロアリなどの温床にもなってしまうのは明らかです。
それ以外にも台風などで古くなった瓦が飛来したり、庭の草木が自宅側の敷地内にも入りこんでくる場合だってあるでしょう。いくら敷地内に入ってきている草木でも、法律上は勝手に伐採したりすることはできません。
こうした問題が起きた場合、一個人として勝手に動くことは難しいので、町内会などで話し合い、役所を通して所有者のに対策を取るよう指導してもらわなければならなくなります。
所有者がすぐに対策を打ってくれればいいですが、応じてくれない場合は最悪です。ご近所の間でも悪い評判がついてしまうので、仮に所有者が将来その土地で新たに家を建てたとしても、町内での調和は難しいでしょう。
問題2:犯罪の増加
空き家が近くにあると犯罪が増加するって知ってましたか?これは警察から直接聞いた話です。2年前に自宅へ空き巣に入られた時、警察官からこう言わました。
「空き巣が侵入したのはこの窓ですね、この窓は隣の空き家があるため、通りからは死角になっています。きっと犯人は隣の家が空き家であることを知っていて、その死角をついて侵入したのでしょう。」
このように空き家というのは、泥棒からすれば格好の隠れみのになり、死角を作ってくれる便利な建物でもあるということです。
そしてもう1つ忘れてはならないのが、空き家が「放火犯罪」の温床になっているということです。近年、空き家を狙った放火が増えていることはニュースでもよく取り上げられています。当然隣の空き家に放火されれば、その被害は間違いなく隣家にも及びますし、鎮火後も臭いがしばらく周辺一帯を包みます。
当然ですが、鎮火後の残骸もそのまま放置されっぱなしという状況なので、さらに状況は悪化するばかりです。
問題3:需要と供給のバランスが崩れる
実はこの問題が、一番身近に感じるはずです。空き家が増えることで、住宅市場の需要と供給のバランスが大きく崩れてしまいます。空き家が増えるにつれ、その所有者たちは「売りたい」「貸したい」と思うので、売却価格や賃料がどんどん値崩れを起こします。
結果、それまでの売却相場や賃貸相場では誰も買ってくれたり、借りてくれなくなりますので、必然的に売却額や賃料を下げるしかありません。
今までなら2,000万円で売ることができた物件なのに、1,500万円でも買い手がみつからなかったり、アパート並の賃料でしか借り手がいなかったりします。さらに怖いのが借り主至上主義となることです。
借り主と貸主の関係は、あくまでも50対50の関係であったのが、借主の立場がどんどん強くなり、貸主側の立場がどんどん弱くなっていきます。その結果として考えられるのが、たちの悪い借主が横行することです。
空き家が増えることで住宅市場のバランスが崩れ、賃貸の家主や買い替えを考えている人など、空き家問題とは関係がない人にまで影響が及ぶのは目に見えています。
問題4:所有者の負担が大きくなる
なぜ空き家のまま放置するのか?という問題を考えてみましょう。考えられるのは以下のような理由です。
- 解体する費用が無い
- いずれ活用する考えがある
- 今は売り時ではない
- そのうちどうするか考える
つまり、自分はその家に住んでいなし、放置することで被害を受けているわけでもないし、すぐにどうこうする考えもない、という理由が大半なんです。解体する費用が無いといいますが、売却すれば解体費用くらいいくらでも捻出できますので、それを理由にするのはおかしいですよね。そして注目して欲しいのは「そのうちどうするか考える」という理由です。
将来的に自分たちが住むのか、売却したり、賃貸に貸すのかわかりませんが、古い家の場合だと固定資産税もたかが知れているので、それくらいの負担であれば今すぐどうこうする必要が無い、という考えの人たちがいるということです。
しかしこの固定資産の問題ですが、今後はそう甘くはありません。平成27年5月から施工された「空き家対策特別措置法」により、これまで軽減財率で支払っていた固定資産税を通常通りの税率で支払う可能性が出てきたからです。
この「空き家対策特別措置法」により、今まで明確に出来なかった所有者を特定することができるようになり、その住宅が空き家に指定された場合、当然所有者には通常通りの固定資産税を支払う義務が生じます。
つまり、今まで6分の1に軽減されていた固定資産税が、通常通りの税率に戻るので、約6倍の固定資産税が課せられることになります。古い家の場合、仮に年間約5万円ほどの固定資産税で済んでいたのであれば、年間30万に跳ね上がります。年間10万円程度だったのであれば、60万円の固定資産税を支払うことになるというわけです。
この「空き家対策特別措置法」が完全施工されたことで、今後空き家問題は急ピッチで改革が進んでいくことになるでしょう。今現在空き家を所有している人や、今後空き家所有する可能性がある人は、今のうちに対策を真剣に考えておかなければならなくなったというわけです。
では、ここからは「空き家対策特別措置法」について解説していきたいと思います。
空き家対策特別措置法とは?
今までは空き家があったとしても、行政は指導するだけで直接的な介入はできませんでした。それが、この「空き家対策特別措置法」が施工されたことで、行政が強制的に介入し、解体や対策などを直接指導・実行することができるようになりました。
つまり、「空き家をなんとかしてください」というお願いしか出来なかったのが、「期日までに対策をしなければ、行政が強制的に解体しますよ」という権限が与えられたことになります。実際に神奈川県横須賀市の空き家がこの「空き家対策特別措置法」によって取り壊されています。テレビなどでもたまに耳することがある「行政代執行」がコレです。
行政が勝手に取り壊してくれるなら、解体費用が掛からず済むからラッキーなんて思っていませんか?それは甘いです。いくら行政が勝手に取り壊しを行ったとしても、その解体に掛かった費用は所有者にしっかり請求されます。もし支払いを拒否したら、「財産の差し押さえ」を受けることになってしまいます。
さらに自治体によって違いはあるものの、最悪のケースでは、行政代執行を受けた人(所有者)の氏名や住所まで公表されてしまいます。
どんなケースが「空き家」に該当するのか?
では、どんな時に空き家になってしまうのでしょうか。例えば下記のようなケースもあるでしょう。
- 売却中だが、なかなか買い手が見つからない
- 賃貸で貸すつもりだが、なかなか借りてが見つからない
- 相続したばかりで、今後どうするか決まっていない
しかし、人が住んでいない家がすべて「空き家」に該当するという訳ではないんです。今回の「空き家対策特別措置法」に該当する空き家というのは、以下のような場合です。
- 1年を通して誰も住んでいない状態の家
- 倒壊等による保安上危険となるおそれのある家
- 衛生上有害となるおそれのある家
- 適切に管理されておらず、著しく景観を損なっている状態の家
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態の家
こうしたケースに該当するかどうかという判断は、地域住民や所有者がする訳ではなく、市町村などの自治体が調査をし、最終的な判断を行います。ただし、明らかに空き家状態であるにも関わらず、「売却の予定」だとか「賃貸の募集」をしているという虚偽の弁明は通用しません。
自分が所有する家屋が「空き家」に特定された場合、何の相談もなく勝手に行政が解体を実行するなんてことはまずありません。この「空き家対策特別措置法」の真の目的は、あくまでも所有者の意識向上であり、自主的な対策です。
そのため、空き家に特定された場合は、適切な対策を講じるよう指導がくるので、真摯に問題と向き合って解決方法を考えていくことになります。
空き家の活用法について
現在は両親が住んでいるので、空き家問題とは無縁という人でも、いつか必ずこうした問題に直面するときが来ます。いざ自分がその立場になってからアレこれ考えるよりも、両親や兄妹などと今のうちから将来的な使い道や、対策を考えておくことが大切です。
今回は空き家となった実家を例にして、どのような活用法があるのかを考えてみます。
- 売却してしまう
- 賃貸として貸し出す
- 更地にする
- リフォームや建て替えして住む
- 空き家管理会社に管理を依頼する
大きく分類すると、上記のような活方法が一般です。
実家の相続となれば、自分だけの判断で決められないことも多いの、配偶者や兄妹などと事前にしっかり話し合いしておくようにしましょう。
1:売却してしまう
売却してしまうというのが、今回のケースでは一番現実的でしょう。兄妹はすでに別に住まいを持っており、実家には誰も住む予定がないのであれば、早い段階で売却をし兄妹で分配するのが一番揉めることが少ないと言えるでしょう。
【メリット】
- 現金化することができる
- 固定資産税などを払う必要がなくなる
- 管理をしなくていい
【デメリット】
- 思い出の家がなくなる
- 収益を生まなくなる
2:賃貸として貸し出す
借り手があるようであれば、賃貸として貸し出すというのも選択肢となるでしょう。ただし兄妹がいる場合などは、兄妹みんなで賃料を分配するのか?誰が管理をするのか?固定資産税は誰が払うのか?などの問題も出てきます。
【メリット】
- 家賃収入が見込める
- 将来的に自分たちが住むこともできる
【デメリット】
- トラブルやクレームに対応しなければならない
- 入居者がいなければ収益は生まない
- 建物の劣化や設備の修理など、補修費用が掛かる
- 確定申告など、管理に手間が掛かる
3:更地にする
活用法が決まるまで、更地にして管理していくという手もあります。この場合、需要があれば駐車場として賃料を生み出すこともでき、売却するにしても、兄妹の誰かが家を建てるにしても活用法はいくらでもあります。ただし解体費用などを誰が捻出するのか?賃貸と同じように誰が管理するのか?という問題も起き、当然毎年固定資産税が掛かります。
【メリット】
- 駐車場として収益を生み出す
- 売却しやすくなる
- 自分たちが自宅を建てることができる
【デメリット】
- 固定資産税が上がってしまう
- 解体費用が掛かる
4:リフォームや建て替えをして住む
兄妹のうちの誰かが建て替えや、リフォームをして住み続けることになっているのなら、それが一番です。リフォームであれば実家の原型を残せることもあるので、両親も嬉しいはずです。
【メリット】
- 新築を建てるよりも、土地代が浮くぶん安上がり
【デメリット】
- まとまった費用が必要
- 兄弟がいる場合は相続で揉める可能性がある
5:空き家管理会社に管理を依頼する
空き家を管理してくれる専門の管理サービスがあります。こうしたサービス会社は近年増加しており、月々○万円とか、1回の巡回につき○万円というように料金体系も様々です。もちろん倒壊などの対策であったり、庭木の剪定などが必要な場合は別途費用を払いお願いすることになります。
【メリット】
- 手間が掛からない
- 遠隔地の実家でも管理できる
【デメリット】
- 月々管理費を支払う必要がある
- 草木の剪定や修繕にお金が掛かる
早い段階で売っておくのがベスト!
空き家には色々な活用法がありますが、おすすめするのは早い段階で売却することです。リフォームや建て替えで、自分たちが引き続き生活をするという選択肢を除いては、空き家は早い段階で売却しておくのが、一番ベストな選択肢でしょう。
理由は、年々空き家が増加しており、近い将来確実に需要に対し、供給が大幅に上回ってしまうことがわかりきっているからです。その問題が深刻化してからでは、「売りたくても売れない!」という状況に陥ってしまいます。
一時的に賃貸で収入を得ることができても、近い将来、確実に賃貸の需要も供給数が上回り、確実に借り手至上主義の時代がやってきます。
「買い手がある段階で売却しておく!」これが空き家問題を解決するには一番ベストな方法です。今すぐに売却する予定がなくても、今売るとしたら「どれくらいの額で売れるのか?」は知っておくことをおすすめします。1~2年おきに売却査定をしていくことで、市場の相場を知ることができるので、大幅に価格が下落する前に売却することが可能になるからです。