
戸建て住宅を売却するということは、その建物が建っている土地も同時に売却するということです。この場合、土地のトラブルが発生する可能性があり注意が必要です。
また、不動産業者も土地トラブルが発生しづらい、マンション売却を優先する傾向が強くあることも同時に知っておきましょう。
中古戸建ての売買に必ず付帯しているのが、土地の売買です。土地の問題というのは売主と買主だけでなく、隣接地の住民も関わってくるのでトラブルになる可能性はそれだけ高くなります。
実測売買と登記簿売買で起こる土地トラブル
土地の売買には、「実測売買」と「登記簿売買」の2種類があり、一般的に多用されているのが「登記簿売買」です。この実測売買と登記簿売買の意味をしっておかなければトラブルに巻き込まれる可能性が高くなりますので、その違いだけでも知っておくようにしましょう。
実測売買と登記簿売買の違い
実測売買というのは、単純に説明すると隣地民立会いのもと測量を行い、その面積に乗じて販売価格を決定する方式です。隣接している全ての土地所有者の立会いが必要ですし、道路(公道)と接している場合は役所の立会いも必要となります。
登記簿売買とは、法務局などに登録してある土地面積を元に売却代金を決定する売却方法です。坪単価30万円と仮定した場合、法務局に登録されている50坪の土地であれば、50坪×30万円=1500万円という金額になります。
この場合、売却後に実際の土地の広さが登記データと異なっていたとしても売却金額などの払い戻しなどは請求できません。それを知らずに、売買契約後に実際の土地面積が契約時のデータと違ったので、差額分を払い戻せというトラブルが発生するケースは珍しくありません。
確定測量は時間も費用も掛かる
上記のような問題があるのであれば、毎回実測売買にすればいいのでは?と思うかもしれませんが、実測売買をするには時間と費用が相当掛かるというデメリットがあります。
隣接している土地所有者が同時に集らなければなりませんし、誰か一人でも境界問題を唱えると、その時点で問題解決するまで話が先に進まなくなります。
そのため土地売買の多くが登記簿売買を行うのですが、仮に登記簿売買を選択するにしても土地の境界を明確にする「確定測量」だけは実施しておくことをおすすめします。気になる確定測量の費用ですが、一般的な中古戸建ての物件であれば平均30万円~50万円くらいになると思います。
土地トラブル事例
土地のトラブルは境界問題だけではありません。
私が実際に体験したことがある土地トラブルなどを少し紹介してみたいと思います。
再建築不可の土地は意外に多い
築40年過ぎている古民家の売買を依頼されたことがあります。この家は先祖代々受け継いできた土地に40数年前に家を建築していました。しかし40数年前と現在では建築に関する法律が異なっています。この家の問題は道路の問題があり再建築が不可ということです。
昔であれば建築できたのに、今の法律では新しく家を建てることができません。このように法律の変更により再建築が不可の中古住宅は意外に多くあります。このような中古住宅を売買するには、少し工夫が必要になります。
詳しくは、別記事の「再建築不可の中古住宅を売却できるか?」で詳しく解説していますので参照ください。
土地が何筆にも分かれている
100坪を超えるような広い土地にありがちなことなのですが、土地が複数に分筆されていることは珍しくありません。理由は家を建てる部分だけを地目「宅地」にしておき、残りの土地を畑や雑種地とすることで固定資産税を抑えるのが目的です。
滅多にあることではないのですが、道路と接している一番大事な部分を分筆し、その土地を担保に融資を受けていることがありました。もちろん、売買契約の前に登記簿謄本を取るのですぐに発覚することなのですが、売主側はそのことを内緒にし、あわよくば売買代金を得ようとしていたのです。
ものすごく売買に不慣れな不動産業者であれば、売買契約時に必要書類を揃えるまで分筆されている土地に抵当権が付いていることに気付かない可能性だってあります。そうなると手付金の受け渡しは終わっているので、手付金の返金に応じることができずにトラブルになることも考えられます。
~まとめポイント~
このように土地が絡むことで、マンションよりも戸建ての売却というのは数倍難しくて面倒になります。そのため、不動産業者のなかには、トラブルが少ないマンション売却を積極的に扱い、戸建ての売却を敬遠する業者も少なくありません。
そのような業者に戸建ての売却を依頼してしまうと、いつまで経っても売却できないまま時間だけが無駄に過ぎてしまいます。それくらい中古戸建ての売却というのは、仲介をお願いする業者選びが重要になるということを知っておいてください。