トラブルの相談と住宅リフォーム紛争処理支援センター

苦労して手に入れた家が欠陥住宅だったら・・・。こんな悪夢から消費者を救う目的でつくられた法律が「品確法」です。

2000年に施行された同法では、完成引き渡し後10年以内に見つかった欠陥は、建築業者や売り主に修理・賠償を求めることができる旨などを定めています。この法律に基き国交省所管の公益法人として設置されたのが「住宅リフォーム・紛争処理支援センター」です。

ここでは、もしもの時に頼りになる、この組織を紹介していきます。

トラブルの相談と住宅リフォーム紛争処理支援センター
  1. 住宅リフォーム・紛争処理支援センターとは
    1. 相談内容と事例
    2. 相談サービスの流れ
    3. 相談方法
  2. まとめ

住宅リフォーム・紛争処理支援センターとは

「公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター」は、『品確法』に基き国土交通大臣により「住宅紛争支援センター」として指定され、住宅トラブルの消費者支援業務を行う機関です。

『品確法』の正式名称は『住宅の品質確保の促進等に関する法律』。

住宅の売買では、プロである建築業者や売り主は、買い主に対して圧倒的な情報的優位にあります。このような「情報の非対称性」によって、買い主が不利益を被ることが少なくありませんでした。

売り主が、故意または過失により、雨漏りや不同沈下など物件のマイナス要因を買主に伝えず売買が行われ、後になって問題が発覚するケースです。

これまでは、業者がクレームに応じない場合、買主は賠償を求める裁判を起こすしかなく、公判に長い年月を強いられたり、訴訟維持の費用を負担しなけらばならず、多くは泣き寝入りするのが実情でした。

2000年(平成12年)に施行された『品確法』は、このような情報弱者を救済する目的でつくられた法律です。

この法律の柱となるのが、瑕疵(かし=きずの意)担保責任です。購入した住宅に、引き渡し後10年以内に欠陥が見つかった場合、それを賠償する責任は、建築業者や売り主にあるとしています。

その前提として、住宅に「住宅性能評価書」や「住宅瑕疵担保責任保険」があることを条件としました。つまり国は、住宅の供給業者や売り主に、売りたければこのハードルをクリアせよと申し渡したのです。

2010(平成22)年、住宅紛争処理支援センターは、業務の拡充のため「住まいるダイヤル」を開設し、「見積チェックサービス」や「専門家相談」を開始しています。

設立から2016(平成28)年3月末までの16年間の相談件数は、26万件にのぼっています。(2017年 住宅相談統計年報)

相談内容と事例

「住宅紛争処理支援センター」という名称から、深刻な紛争だけの処理機関と思われがちですが、実は「リフォームの見積を見てくれませんか?」などの電話相談に、専門家が気軽に応じてくれる窓口です。

「住まいるダイヤル」は、あなたの相談内容に応じて、建築や法律のプロフェッショナルが、公正中立の立場からアドバイスをしてくれます。

たとえば「見積チェックサービス」では、

  • 数社から取った相見積もりの体裁が異なり、金額の比較ができない。
  • 見積書が一式表記となっていてわかりづらい。業者に明細を求めたら拒否された。
  • 訪問販売業者に屋根の葺き替えをすすめられたが、本当に工事が必要か疑問。

などの相談に対して、専門家が実際の見積書を検討の上、適切で詳細なアドバイスを行っています。

それらの相談とアドバイスの内容は、案件ごとに記録したPDFでダウンロード・閲覧できるので、電話相談の前に、類似の相談がないか参照することをおすすめします。

参考:住宅リフォーム・紛争処理支援センター」リフォーム見積チェック事例

また、リフォームにかぎらず、新築住宅やマンションの売買、建売住宅の相談も受け付けています。さらに、住宅供給業者が倒産したり、住宅部品の製造物責任(PL)事故等が起こったりしたケースに対しても、簡易な手続きで紛争処理をサポートしています。

相談サービスの流れ

サービスは「住まいるダイヤル」からスタートします。「こんなつまらないことで電話してもいいの?」などと悩まずに、まずは電話してみましょう。

電話だけでは解決が難しいと判断された時には、専門家との対面による相談へ移行します。これが弁護士や建築士との「専門家相談」で、各都道府県の弁護士会で行われます。

「専門家相談」の後、弁護士会の中にある「住宅紛争審査会」による裁判以外の「あっせん」「調停」「仲裁」などの解決に移ります。

相談方法

電話相談

「住まいるダイヤル 0570-016-100」に電話をし、相談の内容を告げます。PHSや一部IP電話からは03-3556-5147。受付けは土、日、祝祭日、年末年始を除く10:00~17:00です。

電話相談の際には、氏名や電話番号等を告げる必要があります。これは、二度目以降の相談にスムーズに回答したり、補足回答の連絡をするためです。

相談内容は統計資料として記録されますが、もちろん個人情報は厳密に守られます。

専門家相談

相談者が次のいずれかに該当すれば、専門家による対面相談が可能です。 

  1. 評価住宅(建設住宅性能評価書が交付された住宅)の取得者または供給者
  2. 保険付き住宅(住宅瑕疵担保責任保険が付された住宅)の取得者または供給者
  3. 住宅リフォーム工事の発注者または発注予定者

予約制なので「住まいるダイヤル 0570-016-100」への予約が必要です。

専門家相談とは、一級建築士と弁護士が相談者と対面で聞き取りを行い、解決へのアドバイスをします。相談は、各都道府県の弁護士会で行われます。

解決方法は「あっせん」「調停」「仲裁」など裁判によらない方法で、相談者が選ぶことができます。費用は申請費用1万円のみで、それ以上はかかりません。

まとめ

リフォーム関連の紛争は後を絶ちません。リフォーム業は、建設業や建築士事務所と異なり、開業に許可が必要ないため、悪質な業者にとっても参入障壁が低いのです。

「住まいるダイヤル」へのリフォーム訪問販売の相談件数は、2005(平成17)年をピークに減少に転じたものの、2010(平成12)年から再び増加傾向を見せ、今日に至っています。

相談内容を分類すると、契約前の相談が6.3%、契約後の相談が93.7%。これを見ると、不安を抱きつつも業者に強引に押し切られて契約したものの、結局トラブルとなり、相談にいたる様が想像されます。

「見積チェックサービス」は、このような紛争を未然に防ぐためのサービスです。悪質な業者だけでなく、優良な業者といえども仕事熱心なリフォーム営業担当であれば、多少なりとも強引に契約に持ち込むクロージング手法を用います。

リフォーム契約は、少しでも不明な点があれば、立ち止まることが肝要です。業者に「あなたの提案は素晴らしい。でも今日は契約しませんよ」と宣言する勇気を持って下さい。

多少語弊はありますが、「振り込め詐欺」の撃退法と同じです。一呼吸おいて身近な誰かに相談すること。トラブル回避には、これが肝要です。


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