リフォームの出来ること、出来ないことを理解しておこう

リフォームの出来ること、出来ないことを理解しておこう

住宅には、日照や通風など快適で健康な居住性が求められます。また、地震など外からの力に耐える強い構造が求められます。住宅リフォームへのさまざまな制限は、これらの目的を達するためのものです。

はじめてリフォームする人々にとって煩わしく感じるこれらの規制は、結局は自他の安全な居住環境を守るためのものなのです。法的な、あるいは構造的な制限を知ることは、リフォームを成功させる第一歩となります。

建物別の出来ること、出来ないこと

リフォームは、戸建て住宅かマンションかの建物の形態によって、出来ること、出来ないことの内容が少し異なります。

戸建て住宅は比較的リフォームの自由度が高いといえますが、増改築など構造やボリュームの変更を伴う大規模改修では、新築時と同じく法的な規制を受けます。

具体的には、現在の建物が法的に違反していないことを示す「検査済証」と、リフォーム後の建物が法的に違反していないことを示す「建築確認申請書」を提出し、建築許可を得、リフォームにとりかかります。

他方、マンションなどの集合住宅では構造とは関係のない専有部分のみのリフォームとなるため、改修は法的な規制を受けないかわりに、マンションの「管理規約」の制限を受けます。

戸建て住宅

内装や外装、水廻りの改修など、ほとんどの戸建て住宅のリフォームは、制限なく自由に行うことができます。

しかし、建物のヴォリュームが変わる増築、構造にかかわる改築などのリフォームでは、新築時と同じく以下のような建築基準法、都市計画法、民法などの規定に従わなければなりません。

1. 「建蔽率(けんぺいりつ)」や「容積率」の要件を満たしているか?

「建蔽率」と「容積率」とは、都市計画法の規定です。敷地面積を100とした場合、その敷地に建てることができる建築面積を「建蔽率」、延べ床面積の割合をあらわしたものです。

建築面積とは、簡単にいえば、上空から家を見たときの建物の投影面積と理解すればよいでしょう。延べ床面積とは、各階の床面積の合計のことです。

新築住宅では、この要件を満たしていないと違反建築となりますが、リフォームでも守らなければなりません。

いま住んでいるあなたの住所の「建蔽率」「容積率」を知るためには、市役所の都市計画課などに電話で問い合わせるか、市役所で販売している都市計画図を購入します。新築時の制限が緩和されている場合もあるため、増築をする前に確認しておくとよいでしょう。

2. 道路斜線、隣地斜線、北側斜線などの斜線規制に抵触していないか?

周囲の日当たりや風通しを妨げないようにするための制限です。平屋に「おかぐら」で2階を増築したり、2階建を3階建に増築する場合には、注意が必要です。

ちなみに2階建を3階建に増築できるのは、増築を前提とした3階用の基礎がある場合にかぎられます。

3. 隣地境界線まで50cmの距離をとっているか?

外壁から隣地境界線(=お隣との境界線)まで、少なくとも50cmの距離をあけなければならないとする民法規定があります。守られていない場合は、隣家から建築の中止や、建築後なら損害賠償を求められることがあります。

もっとも、地域の慣習や防火・準防火地域では例外とする規定もあり、弾力的に運用されています。実際には、隣家に事情を説明して承諾書が貰えるなら問題はありません。

また、都市計画によっては、第1種低層住居専用地域と第2種低層住居専用地域の2つの用途地域内に、1.5メートルまたは1メートルのいずれかの外壁の後退距離が定められることがあります。

増築する時には、これらの法令に配慮する必要があります。

マンション

マンションは、「専有部分」と「共用部分」に区分されており、区分所有者がリフォームできる範囲は、基本的に住戸の「専有部分」に限定されます。

専有部分の範囲は、管理組合が定める「管理規約」に明記されています。例えば、

  • 住戸内の間仕切り壁は専有部分
  • 躯体や、取り付けられた窓・窓ガラス・窓枠は共用部分
  • バルコニーは共用部分
  • 玄関ドアは内側の塗装と錠のみ専有部分で、ドア本体やドアの外部塗装は共用部分

などが定められています。

さらに「規約」では、リフォームに先立って理事長の承認が必要であることや、床材の防音性能や壁材の防火性能など、使用する建材の条件を細かく規定している場合もあるため、確認が必要です。

工法別の出来ること、出来ないこと

住宅の工法は大きく分類すると、木造、S造、RC造に分かれます。構造上の理由から、それぞれ出来ること、出来ないことが異なります。

木造

木造住宅は、柱のある軸組み(在来)工法と、柱がなく壁のみからなる2×4(ツーバイフォー)工法に分かれます。いずれも構造の要である柱や壁は、動かすことはできません。

たとえば、間仕切りを撤去して2室を1室につなげるリフォームなら、壁を動かしやすい軸組み(在来)工法が比較的容易といえます。

上述の二つの工法は「オープン化」された工法です。「オープン化」の工法では、モジュール(建築の基準となる寸法)が標準化されており、どんな業者でも一般の市場で資材を自由に手に入れ、公開されたノウハウに従ってリフォームすることができます。

オープン化された工法に対して、ほとんどの住宅メーカーが提供するプレハブ住宅は、「クローズ」な工法といえます。構造に関する情報は社外秘となっており、部材も指定の工場で製造され、指定の業者のみに供給されるため、一般の業者ではリフォームすることができないのが現実です。

大手のハウスメーカーは莫大な販売管理費をリフォーム価格に転嫁するため、ローカルのビルダーに比べ割高となっているようです。内装や外装、水廻りの改修など、構造に関係のないリフォームは、地域の信頼できる業者に依頼するのが得策でしょう。

S造

「えすぞう」と読みます。Sはスチール(鋼材)の意で「木造」に対する呼称です。

厚さ6㎜以下の鋼材を使う「鉄骨軸組工法(軽量鉄骨造)」と、厚さ6㎜を超える鋼材を使う「重量鉄骨ラーメン工法」があります。

薄い鋼材を用いる「鉄骨軸組工法(軽量鉄骨造)」では、補強のため壁や天井にX字状に鉄筋の「ブレース」が入っているため、リフォームは一定の制限を受けます。「ブレース」は、木造の「筋交い」「火打ち」に相当するもので、取り去ることはできません。

「重量鉄骨ラーメン工法」は中高層建築に用いられる工法で、重量鉄骨を剛接合する強固な構造のため、柱と柱の間隔を広く取った大空間が可能です。リフォームの場合でも、間仕切り壁をすべて取り去って、間取りを作り直すスケルトンリフォームが可能となります。

RC造

「あーるしーぞう」と読みます。RCとは「Reinforced-Concrete(補強されたコンクリート)」、いわゆる鉄筋コンクリート構造の意です。

RC造の建物も前項の重量鉄骨ラーメン工法同様、自由度の高い工法で、スケルトンリフォームが可能です。

しかし、RC造の中には「壁式構造」を取るものがあります。室内に柱や梁の出っ張りがないことから、すっきりした室内空間をつくりだすことができます。

「壁式構造」の住居では、間仕切りが耐力壁となっている場合があるため、リフォームには注意が必要です。

まとめ

建物別、構造別に「出来ること、出来ないこと」を見てきました。これからリフォームしようとする人が、これらを知っておくメリットは二つあります。

第一に、基本的な知識を持ち、担当者のレベルに近づくことで、リフォームの密度が濃くなります。なぜなら担当者は、あなたが基本的な建築知識を共有しているとわかれば、対応レベルを上げるからです。基礎知識の説明を省略し、より高度なプレゼンテーションにエネルギーを傾注しようとするでしょう。

第二に、基本的な知識すら持たない、あやしげな担当者を選別することができます。リフォーム会社のなかには営業専門会社が多く、残念ながら建築や法規の知識や、リフォームスキルに乏しいスタッフも少なくありません。いくつかの質問で、相手の知識・経験のレベルをある程度推し量ることができるようになります。

リフォームに限らず、建築や不動産のトラブルの原因のひとつには、売る側と買う側の圧倒的な情報の格差、いわゆる「情報の非対称性」があります。

リフォームの「出来ること、出来ないこと」を知ることで、失敗を未然に防ぐことができるのです。


目次一覧

水回りのリフォーム

室内リフォーム

外壁塗装リフォーム

外回り、全体のリフォーム

リフォームの基礎知識

リフォームに関するお金

コラムQ&A