使わない土地を貸す場合の契約方法と収益目安

使わない土地を貸す場合の契約方法と収益目安

使っていない土地を上手く有効利用したいと考えている人は多いと思いますが、専門知識もない素人同然の人にとって、収益性のある有効な土地活用を行うことは簡単なことではありません。

近年は政府のゼロ金利政策により、銀行金利が引き下げられたことでマンションやアパート経営に乗り出すサラリーマン投資家も多くなりましたが、この土地活用にしても高額な初期投資費用が必要な上、入居者確保など決して低くはないハードルをクリアしなければ満足な収益を上げることはできません。

できるならば、投資費用もかけず素人でも簡単にできる土地活用をしたいと思いますよね。そんな人におすすめなのは、土地を貸して収益を得るという方法です。

そこで今回は土地を貸して収益を上げるには、どんな契約方法があるのかを解説していきます。

土地を貸す場合の契約方法①

まずは土地を貸して収益を得る方法で最もベーシックな形となる、土地を貸して地代を収益として得る契約方法について解説します。土地を貸す場合には定期借地権を利用した契約が必要になります。

定期借地権とは契約期間が満了すれば、貸した土地が地主のもとに返されることを保証した権利のことです。この定期借地権を利用することで契約満了とともに借地人を立ち退かせることができるので、契約満了後は地主が自由に土地活用できるようになります。

そしてこの定期借地権には下記の3種類があり、どの定期借地権を利用して賃借契約するのかによって契約の条件内容が変わってきます。

  • 一般定期借地権
  • 建物譲渡特約付借地権
  • 事業用定期借地権

それではこれら3つの契約条件がどうなっているのかを見ていきましょう。

一般定期借地権とは?

一般定期借地権による契約には下記の条件が課せられます。

  • 契約期間 50年以上
  • 契約更新 なし
  • 利用目的 制約なし
  • 契約満了後の建物の扱い 更地にして返還(費用は借地人負担)

それではこれら条件から一般定期借地権による、賃借契約のメリット・デメリットを見ていきましょう。

一般定期借地権のメリット・デメリット

一般定期借地権のメリットは下記のとおりです

  • 契約満了後には土地が更地で還ってくる
  • 長期間において安定した収益が得られる
  • 相続税評価の特例が適用される
  • 固定資産税の特例が適用される

この中でも最も注目すべきは減税効果です。定期借地権が設定されている場合、定期借地権の残存期間に応じて相続税評価額に20%から5%の評価減が認められていますが、一般定期借地権の場合は相続税評価の特例が適用されるため、通常よりもさらなる評価減となり、さらに大きな相続税の減税効果が得られます。

また定期借地権で貸した更地に借地人が住宅を建設すれば、地主は下記のように固定資産税を大幅に軽減できます。

  • 住宅1戸につき敷地200㎡までの固定資産税を6分の1に減税
  • 住宅1戸につき敷地200㎡を超えると床面積10倍までの固定資産税を3分の1に減税

これら減税効果は定期借地権全般に共通しているメリットとなるので、定期借地権の重要ポイントとして覚えておくようにしましょう。

それでは次はデメリットを見てみましょう。一般定期借地権のデメリットは下記のとおりです。

  • 50年に及ぶ長期間、土地の転用ができない

契約期間中に割のいい土地活用が見つかっても、契約終了までは土地を転用することはできません。長期間において安定した収益が見込める反面、途中で父活用の方向修正がしづらいので、短期・中期で土地活用を考えている人にはおすすめできない契約方法となってくるでしょう。

一般定期借地権の収益目安は?

収益目安はまずは適正地代が目安となってくるでしょう。基本的に地代は地主が提示した金額を借地人が受け入れるかどうかによりますが、適正地代を下回らない設定が第一条件となってきます。

収益目安を考える際には、まずは適正地代が幾らになるのかを知る必要があるでしょう。適正地代は賃借契約時に権利金を支払ったかどうかによって変わります。権利金を支払った場合、賃借開始後の土地権利状態は下記のようになります。

  • 借地権 借地人に権利がある部分
  • 底地  地主に権利がある部分

この場合の適正地代は下記の計算式で算出できます。

土地評価額 × (100%-借地権割合)× 6%

しかし、親族等の同族間取引の場合など権利金のやり取りがないケースでは、権利金支払いにより発生する借地権が得られません。よって、下記のように土地全体の評価額に対して地代を支払う形となりため、先ほどの地代よりも高い地代を支払うことになります。

土地評価額 × 6%

共に土地評価額の6%が適正地代となりますが、契約時の権利金発生の有無によって適正地代は違ってきます。正確な収益目安を得るためにも、この点はしっかりと押さえておきましょう。

建物譲渡特約付借地権とは?

建物譲渡特約付借地権による契約には下記条件が課せられます。

  • 契約期間 30年以上
  • 契約更新 なし
  • 利用目的 制約なし
  • 契約満了後の建物の扱い 建物付きで地主に返還

それではこれら条件から建物譲渡特約付借地権による、賃借契約のメリット・デメリットを見ていきましょう。

建物譲渡特約付借地権のメリット・デメリット

建物譲渡特約付借地権のメリットは下記のとおりです

  • 契約満了後に建物付きで土地が還ってくる
  • 長期間において安定した収益が得られる
  • 一般定期借地権よりも短期間で土地が還ってくる
  • 相続税評価の特例が適用される
  • 固定資産税の特例が適用される

得られるメリットは一般定期借地権と重なる点が多いのですが、最も注目すべき点は建物が付いて土地が返還されるところです。借地人がマンションやアパートなどの事業をしていれば引き継ぐこともできます。収益性の高い事業を行っていた場合には大きなメリットとなるでしょう。

しかし、このメリットが同時にデメリットとなることも理解しておかねばなりません。それはこの建物は無償ではなく借地人から買い取ることになる点です。返還時の建物評価額にもよりますが、決して安価な金額でないことは予測が付くでしょう。

しかも契約満了時に建物を買い取らなければ借地人の借地権を消滅することはできません。30年後に必要な建物購入費用を算段する必要があるので、この契約方法を選べる人は限られてきます。

建物譲渡特約付借地権の収益目安は?

収益目安については一般定期借地権の場合と同じです。適正地代の算出方法には注意するようにしましょう。

事業用定期借地権とは?

事業用定期借地権による契約には下記条件が課せられます。

  • 契約期間 10年以上~50年未満
  • 契約更新 なし
  • 利用目的 事業用物件(住宅を除く)
  • 契約満了後の建物の扱い 建物付きで地主に返還

それではこれら条件から事業用定期借地権による、賃借契約のメリット・デメリットを見ていきましょう。

事業用定期借地権のメリット・デメリット

事業用定期借地権のメリットは下記のとおりです

  • 契約満了後に建物付きで土地が還ってくる
  • 宅地よりも高い地代が設定できる
  • 短期間で土地が還ってくる
  • 相続税評価の特例が適用される
  • 固定資産税の特例が適用される

他の2つと重なっているものもありますが、事業用として土地を貸すことになるため、ほかでは見られないメリットが発生しています。交通量の多い道に面した土地は宅地には向きませんが、商業施設の建設にはこの上ない好立地条件となります。

この付加価値によって通常の宅地の地代よりも高い地代の設定もできます。しかも、契約期間が10年と短く、返還時には建物の買取を行わずに建物付きで土地が還ってきます。事業目的という点からも事業性が高く、収益性の望める物件が無償で得られる可能性がある点は大きな魅力となってくるでしょう。

しかし、デメリットとしては本来宅地として利用できない環境にあるため、契約者は事業者に限定され借り手が付きにくい場合もあります。メインの通りであれば話は別ですが、交通量の少ない環境では借り手が少なく、地代も減額する必要が出てくるかもしれません。

事業用定期借地権の収益目安は?

収益目安を算出するベースとなる適正地代ですが、事業用定期借地権の場合は他の2つと違い、契約時の権利金が発生しません。よって、適正地代は下記のとおりとなり、これが収益目安の基準値となってきます。

土地評価額 × 6%

しかし、事業用定期借地権の地代は交通量などの環境要因によって左右される集客率の高さが大きく影響してきます。その際によく利用されるのが収益分析法による地代設定です。

収益分析法では借地人もしくは地主による事業予想収益をベースに地代を算出する方法で、事業予想収益が高いほど高い地代設定となります。事業性の高い土地においては、通常よりも高い収益を期待できるでしょう。

土地を貸す場合の契約方法②

ここまでは単に土地を借地人に貸し出す場合の契約について説明しましたが、今回は少し趣向の違った契約方法について解説していきます。

その契約方法は下記の2つです。

  • 等価交換
  • 土地信託

これら2つは単に土地を貸し出すにとどまらず、さらなる収益が望める方法となるのでしっかりとその違いを理解しておきましょう。

等価交換とは?

等価交換は地主がデベロッパーに土地を売却し、その土地に建てたマンション等から売却益に相当する権利を得る方法です。土地の価格が5億円、物件価格が15億円とすれば、地主は5億円の土地を手放す代わりに、そのマンションの3分の1の権利を所得することになります。

よって、等価交換の流れは下記のとおりとなります。

  1. 土地をデベロッパーに売却
  2. デベロッパーがその土地に建物を建設
  3. 地主はその建物の一部権利を取得する

実際には悪質業者による計画倒産や転売などのリスクを考えて、土地全てを売却するのではなく一部を残すケースが一般的です。先ほどの例だと3億円分の土地を売却して3億円分のマンションの権利を取得し、2億円分の土地権利を残すといったケースが多くなってくるでしょう。

等価交換のメリット・デメリット

それでは等価交換にはどのようなメリット・デメリットがあるのかを見ていきます。

等価交換のメリットは下記のとおりです。

  • 物件を手に入れるための借り入れが発生しない
  • 土地を手放しても自分の住まいを確保できる
  • 譲渡税の優遇措置が受けられる

等価交換によって得られる権利の大きさにもよりますが、何より借り入れなしで新築物件に居住でき、家賃収入等の収益が期待できるのは大きなメリットとなってきます。

また等価交換は「立体買換えの特例」に当たり、譲渡所得税の課税を100%繰延できます。免除ではなく繰延ですから将来的に売却する際には、繰延べた分の譲渡所得税を支払う義務が発生しますが、保持している間は支払いから逃れることができます。土地と建物の譲渡所得税となれば安価ではないので、この税金支払いを逃れて建物が手に入る点は見逃せないポイントと言えるでしょう。

しかし、等価交換には満足のいく等価交換とならない可能性があるというデメリットも存在します。土地を手放すことにより得られる権利は、下記2つの総合判断によって決定されます。

  • 手放す土地の評価額
  • 建物の評価額

よって、どちらか一方でも納得のいく評価とならない場合には、満足が得られた等価交換とはならない可能性も考えられます。

等価交換の収益目安は?

等価交換の場合、必ずしも収益目的で行われるわけではありません。自分の住居を確保した上で、他を賃貸等に回してどれだけの収益を上げたいのかで収益目安は各人違ってくるでしょう。

しかし、事業目的で等価交換を行う場合には、通常の不動産投資に用いられる利回りが収益目安を決定する基準値となってくるでしょう。不動産投資で儲けが高いと考えられる最低利回りは5%です。

等価交換において売却した土地代から自分の居住区を差し引いた金額を初期投資費用と考え、その金額に対する賃貸収益の利回りが5%を超える状態が収益目安となってきます。

土地信託とは?

土地信託とはその名のとおり自分の持っている土地を誰かに託して利益を得る仕組みです。一般的に託す相手は下記のどちらかとなり、社会的信用度の高いメガバンク系列の信託銀行を利用するケースが多いようです。

  • 信託業務を行っている信託銀行
  • 信託業務を行っている信託会社

また土地信託は信託先と契約を結んだ時点で土地の所有権は信託先に移り、その後の事業展開で発生する利益から配当が得られる信託受益権を取得することになります。これが今回紹介した土地活用とは一番異なる点になります。

土地信託の流れは下記のとおりです。

  1. 信託契約の締結
  2. 信託受益権の取得
  3. 信託先による運用開始
  4. 配当分配
  5. 信託契約終了に伴い、土地建物の返還

土地信託は等価交換のように土地を売却するわけではありません。契約期間が決められており、その終了に伴い土地と建設された建物が返還されることになります。これも土地信託の大きな特徴と言えるでしょう。

土地信託のメリット・デメリット

それでは土地信託のメリット・デメリットを見ていきましょう。そのメリットは下記のとおりです。

  • 契約満了後に建物付きで土地が還ってくる
  • 土地活用の資金が必要ない
  • 知識がなくても専門家による高い土地活用ができる
  • 信託受益権の売買ができる

得られるこの中でも契約満了後に建物付きで土地が返還されるのは大きなメリットです。プロによる事業展開が行われていた物件ですから、返還以降も運用次第では高い収益性が見込めます。

しかし、この土地信託では収益が確保できるかは、信託先次第という大きなリスクが生じます。勘違いして欲しくないのは土地信託をしたから必ず儲かるというわけではありません。資金持ち出しによるリスクが生じないのは何よりですが、収入から経費等を差し引いて何も残らなければ配当は出ません。

資金をかけず高い収益を得るノーリスクハイリターンという結果となる可能性もありますが、そこもこれも信託先の腕次第です。収益が悪化すれば追加投資が求められるケースもあるので、信託先は慎重に選ぶ必要があるでしょう。

土地信託の収益目安

土地のみを信託して資金投資をしない土地信託の場合、赤字を出さない目安とされているのは1坪当たりの月額賃料が8,000円以上の場合です。様々な諸条件が関係してくるため、信託する土地によって期待できる収益は大きく違ってきます。

しかし、1坪当たりの月額賃料が8,000円以上の確保が最低条件となってくるので、収益目安はこれを上回る設定となってきます。

まとめ

今回解説したように眠っている土地を有益に活用するには様々な契約を取ることができますが、どの契約を行うかによって得られる収益性、リスクの高さは違ってきます。

今回の契約は基本的には資金投資をすることなく、土地活用により収益を上げる方法です。一体どれくらいの収益を望んでいるのか、どれくらいまでのリスクを背負う覚悟があるのかによって、選べる契約方法は違ってくるのです。

この点をよく理解して自分の要望に合った土地活用となるよう、最適な契約方法を選択するようにしてくださいね。

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