店舗物件探しで居抜きとスケルトンの違いと注意点

店舗物件探しで居抜きとスケルトンの違いと注意点

住居ではなく商スペースを借りようとするときに出てくる言葉が「居抜き」と「スケルトン」です。簡単に言えば、前に借りていた人がインテリアや設備を残していき、それをそのまま生かして新たな店舗を始めるのが居抜き。すべて一度取り払い、一から店舗を作るのがスケルトンです。双方の特長やメリットデメリットを比べてみましょう。

スケルトン物件

基本的には日本では賃貸契約は元通りに原状回復して返すものなので、一度店内の造作を全て取り払い、何もないスケルトン=骨組みにしてからまた新たに貸し出すケースのほうが圧倒的に多いです。

スケルトン物件のメリット

スケルトン物件の場合、壁も打ちっぱなしで、何一つ店内スペースにはありません。ということは、自分が好きなように内装をいじれるということです。

好きなデザインができる

店舗を始める際には、どんなイメージの店にしたいか、あるいはどんな客層に来てほしいかによって店のインテリアが変わってくるのは当然です。また、飲食店ならやりたい料理のジャンルによって調理機器も変わってくるでしょう。

一から自分で始めるわけですから、自分が使いやすいものを好きなようにレイアウトできるので、「自分のお店」感は強くなりますし、個性も出しやすくなります。

業態変更が容易

たとえば、元々バーがあった場所で眼鏡屋さんが開きたいとか、スイーツショップをお寿司屋さんにしたいという場合、そのままの内装や機器、インテリアではまず無理ですよね。だから、居抜き物件はバーだったらもともとバーだった物件を探す、というように限定的になりますが、スケルトンならどんな業態の店にもなります。

気分一新できる

新たに店を出す自分が新しいもの、自分が好きなものだけに囲まれた店が出せるというのもありますが、それよりも大きいのがお客さんのイメージです。

特に飲食店の場合、多くは潰れて撤退していきますから、振り(いちげんさん)の客が多い繁華街ならともかく、地元の人に来てもらいたい地域密着型の店だと「ああ、あの潰れた店のところね」という負のイメージがつきまとうことは避けられません。

また、前の店があまり評判がよくない店なのであれば、同系列とみなされたり、あるいは前にここでいやな思いをしたからこの場所の店には入りたくないと最初からお客さんを逃してしまうかもしれません。

その点、いくら前の店のイメージが悪くても、まったく違う店にしてしまえば、悪影響はほぼないと考えていいでしょう。

設備が管理しやすい

当然のことながらスケルトン物件では店舗に必要な設備は自分でリースや購入することになります。自分が納得して選んだものなので使いやすいだけでなく、修理の必要性が生じたときにも、修理先や保証期間、手順などが自分ではっきりわかっているので、いざという時のトラブルからのリカバリーは楽になります。

スケルトン物件のデメリット

一から自分の店を作るのは楽しいことですが、その分費用も時間もそして労力もかかります。

開店まで時間がかかる

一度店内をまっさらにして、そこから内装工事や設備の設置を行うために、ある程度の工事期間が必要になります。

すぐに開店できない分、借り手としてはそのタイムラグの間の資金も考えておかねばなりませんし、これは借り手にはあまり関係ありませんが、物件の持ち主の大家からしても、賃貸料がとれない「空き」の時間ができてしまうのはあまりありがたいことではありません。

費用がかかることが多い

これも当たり前ですが、一から全部そろえるので、前からあったものを利用できる居抜きに比べて費用がかかることは多いです。しかしながら、これはあくまでも一般論でやりたい店舗の業態や、店舗の造りによっては居抜きと大して変わらないか、あるいはかえって安くなる場合もあります。

認知してもらうのが大変

商売を始める場合には、まずはお客さんを掴むことが絶対に不可欠です。まったく知らない土地で一から始めると、最初はそこにお店ができたことすら気づいてもらえないかもしれません。

チラシを作って周囲に配布する、オープニング記念で特別に安くするなど、最初の出だしが何よりも大切です。自信がなければ、信頼できるコンサルタントに依頼してもいいでしょう。

居抜き物件

全てを一からスタートするスケルトンとは違い、居抜きは良くも悪くも前の店からいろいろと引き継ぐことになります。中には居抜き専門でチェーンやフランチャイズを広げているような店も多く、肝心なのは成功する居抜き物件を見分ける目でしょう。

居抜き物件のメリット

居抜き物件は数はそれほど多くありませんが、繁華街の雑居ビルの中には数か月ごとに店とオーナーがくるくる変わっているような店もあります。

開店が早い

もし、自分のやりたい店と前の店の業態が同じで、似たような商売をしたいと思っているなら、インテリアや設備がそのまま使えることは多いでしょう。そうなると、店舗経営に慣れていない人でも短期間で開業することができます。

費用が安い

もし、前の借り主の設備がそのままいい状態で使えるなら、その分の費用が浮くわけですからこれはありがたいことです。ただし、使う人によって必要な機器の大きさや設備、あるいは水回りの配置などは違うこともあるので、そうなると設備替えやリフォーム工事が必要になり、かえって費用がかかることもあります。

前の客を引き継げる

あまり多いケースではありませんが、以前は人気店で、成功してもっと広い場所に移転するために出て行ったとか、前の店主が高齢のため惜しまれながら店を畳んだというような、いいイメージがある場合、そのまま前の店のお得意さんを取り込めるかもしれません。人間、一回行きつけの店を作るとなかなか変えませんからね。

「はずし」で遊ぶ

基本居抜きは同業種にメリットがありますが、あえて異業種で勝負するという上級技もあります。たとえば、広島の尾道には古い銭湯のタイルや内装をそのままに、レトロでおしゃれなカフェにした店が人気ですし、古い倉庫をギャラリーバーにしたり、あえて寿司屋のカウンターを残したカレー屋さんだっておしゃれかもしれません。

そのあたりはセンスが問われますが、あえて外してみるのも面白いでしょう。

居抜き物件のデメリット

居抜き物件は最初からセットで揃っているので経験がない人でも簡単に思えるかもしれませんが、そんな人こそ気を付けないと落とし穴にはまるかもしれません。

設備が使いものにならないことも

お店を閉める理由の多くが経営不振です。そんな台所状態の苦しい店が新しい機器を入れたり十分なメンテナンス費用をかけているとは思えないですよね。

居抜きで入ってみたものの、機器が古くてすぐ壊れたとか、トイレの便器が旧式で使えなくて取り替えないといけないとか、古いものなら保証期間も切れていますから撤去費用と改装工事でかえってお金がかかってしまったというのはよくある失敗です。

前の店の評価をひきずる

たとえば近所でまずくて有名でつぶれたラーメン屋の後にまたラーメン屋ができたとして、あなたは行きたいですか?借りる前に一応リサーチはしましょう。

内装が理想とは程遠いことも

バーやスナックに居抜き物件が多いのは、そこそこ似たような造りだからです。ポップなスイーツショップをやりたいのに、アダルトなソファ席は似合いませんよね。あまりにも理想と違うなら、やめておいたほうが無難です。

店舗を賃貸物件で始めるなら、多くの人はスケルトン物件を借りると思いますが、資金の問題などさまざまな理由で居抜きを選ぶ場合には、本当にそこで自分がやっていけるのか、じっくり考えてからにしましょう。コンサルタントなどプロの知恵を借りるのも、火傷しないコツですよ。


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