定期借家(リロケーション)物件を借りる際の注意点

定期借家(リロケーション)物件を借りる際の注意点

日本ではリロケーションは比較的新しい言葉です。本来英語では転勤や配置転換など、単純に住処を変えるという意味ですが、日本では、たとえば転勤中に自分の持ち家が空いてしまうのでその間のみなど、期間限定で賃貸に出すことを言うのが一般的です。別名、定期借家と言われるリロケーション物件はどんなものなのでしょうか?

リロケーション(定期借家)とは?

日本では大家が店子(家を借りたい人)に家を貸す場合、店子のほうには居住権が生じます。居住権が生じるとどうなるかというと、一方的に大家のほうから「そろそろ出て行ってほしい」と言うことが難しくなります。

かつて日本は住宅不足で、戦中戦後は住むところを失った人がたくさん出たため、大家のほうから一方的に追い出すことはできない、また、契約の更新も正当な事由がなければできないとされていました。つまり、大家が望まない人に出て行ってもらうにはある程度まとまった立退料が必要だったのです。

しかし、時は流れて現在では逆に部屋余りが言われています。たとえば、古い物件で入居率が落ちたために建て替えようと思っても、昔からの安い家賃で住み続けたいという人がノーと言えば難しくなっていたので、結果的に古い賃貸物件が大量の空き家のまま放置されるという結果になりました。

現実にそぐわなくなってきたため、最初から期限を決めて家を貸すことができる「定期借地権」や「期限付借家権」が創設されました。これが平成12年に「定期借家法」として整備され、一般の人でも期限つきで気軽に家を貸せるようになったわけです。

どんな物件があるの?

今、ネットでリロケーションまたは定期借家で検索すると、さまざまな物件がヒットしてきます。これらは、普通の借家とどう違うのでしょうか?

定期借家の期間は?

定期借家の場合、厳密に何か月以上とか、何年までという決まりはありません。借り手と貸し手の間で合意があれば、期間は自由に設定できます。

ただ、あまりにも短いと、わざわざ高いお金を払って家財道具を運び、住民票を移してと、さまざまな手続きをする意味がありません。それならマンスリーマンションを長期契約したほうがお得になることが多いので、だいたい1年以上の契約期間にはなるでしょう。

また、借り手と貸し手双方の合意があれば契約期間の更新をすることもできます。たとえば、いつ帰るかわからないけれども、いつかは自分の家に帰る予定がある場合、一般的な賃貸契約ではなく、定期借家契約を自分が帰るときまで更新をくり返すようにすると、自分が帰りたいタイミングで帰ることができます。

どんな物件が出ているのか?

定期借家に物件を出す大家の事情はさまざまです。たとえば期限つきの転勤の間だけ家を貸したいという人もいるでしょうし、実家の親の体調が良くないので一段落するまでは家族で実家に帰って面倒を見るという人もいます。

中には老朽化した建物で、近い将来取り壊しや建て直しが決まっているので、その間部屋を遊ばせておくのももったいないから数か月だけ貸すというケースもあります。自分が住んでいる家を貸す場合は、物件自体は賃貸用のものよりもグレードが高いことが多いでしょう。

定期借家のメリットを見てみる

定期借家は一般の借家とは違って、契約が満了したら双方が更新を望まない限り、必ず退去しなければいけません。そんな定期借家に向いているのは、どんな人たちで、どんなメリットがあるのでしょうか?

決まった期間だけ住みたい

大家側と同じように、借り手側も期限付きの転勤であったり、あるいは結婚前のお試し同棲であったり、期限がある人がもし条件にぴったりの定期借家物件に巡り合えたなら、それはもうラッキーとしか言いようがありません。

期間限定なだけに家賃も周辺の同グレード物件に比べて安く抑えられていることが多いだけでなく、礼金などの初期費用がゼロということが多いのです。少しでもお金を貯めたい人にはぴったりですよね。

掘り出し高級物件もある

元々自らの居住用であればグレードが高いのですが、中には普通では絶対に住めないような広々一戸建てやデザイナーズマンション、駅前ロケーションなど、ハイグレードな物件が出ていることもあります。期間限定ながら、リッチな気分で暮らせるのはいいですよね。

更新料がいらない

普通の賃貸契約の多くは2年の契約更新時に更新手数料として家賃の一か月分がとられますが、これが地味に痛いですよね。定期借家の場合、厳密には更新ではなく新たに再契約という形になるので、この更新料が取られません。

ただし、あくまでも更新するかどうかはこちらの一存では決められないので、基本的には契約満了で引っ越しだと思っておいたほうがいいでしょう。

自由に部屋を改造できるかも

老朽化した物件で取り壊しまでの間、貸したいというような場合、多くは家賃が激安です。さらにそれだけではなく、どっちにしろ取り壊すので原状回復の必要がなく、家を自分が好きなように改造して暮らすことができます。

美大の近所の老朽物件には、そのセンスを生かして壁一面にサイケデリックな絵を描いてしまったり、彫刻のアトリエとして思う存分使っているような人もいます。短期間でも自分の城ですから、自由にできるのはうれしいですよね。

メリットだけではなくデメリットも

条件さえ合えばお得だったり楽しかったりする定期借家物件ですが、もちろんデメリットもありますから、それはあらかじめ知っておきましょう。

引っ越し費用がかさむ

引っ越しはお金がかかります。一年住んですぐに引っ越しということになると、かなり痛い出費になる人もいるでしょう。契約が満了したら嫌でも出なければいけないので、初期費用がかからない代わりに次の引っ越しと住居確保のための費用はプールしておかなければいけません。

特に荷物の多い人や、家族の場合は「もう一度あの引っ越し作業をくり返すのか」とブルーになることもあるでしょう。定期借家物件が気に入っているけれども、あまり引っ越しはしたくないという人は、借りる前に更新ができるかどうか、確かめてみるといいでしょう。

古い物件が多い

転勤族の持ち家などラッキー物件に当たればいいのですが、取り壊しが決まっている老朽物件の場合、自分で自由にできる反面、不自由もあるでしょう。たとえば、配管や備品が壊れたとしても、大家がどうせ取り壊すのだからとのらりくらりと修理を渋るかもしれません。

また、取り壊し間際の建物は、一人また一人と住人が出ていき、寂しくなります。住人が少なければ建物も荒れてきますから、中には廊下の電気も切れっぱなし、幽霊屋敷さながらになってしまう場合もあり、怖がりの人は向いていないかもしれません。

さらに空き部屋に勝手に入り込んで悪さをするような人もいるので、そういう建物は防犯面からも女性の一人暮らしにはあまりおすすめはできませんね。

まとめ

初期費用がいらなかったり、家賃が安かったりと借りるほうにもメリットがあり、自分の転勤中に持ち家を遊ばせずにローン返済の助けにすることができるなど、大家にもメリットがあります。

こう考えると定期借家はなかなかいいシステムに見えますが、借りる際にはメリットだけではなく、契約満了時は問答無用で引っ越さなければいけないなど、デメリットがあることも考えて、先々を考えて借りるか借りないか決めましょう。


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