アパートやマンションを自宅兼事務所にする際の注意点

アパートやマンションを自宅兼事務所にする際の注意点

アパートやマンションは、全ての物件が自宅兼事務所にできるワケではありません。ほかの居住者への配慮から、1つ1つの物件で管理規約が定められています。今回は、アパートやマンションを自宅兼事務所に利用する際の注意点を解説します。

居住用物件を事務所として使用できるの?

結論からいうと、居住用のマンションなどを事務所として利用することはできません。もし、仮に勝手に事務所として利用している場合は、「管理契約違反」となり最悪の場合退去させられることもあります。なぜ、居住用物件を事務所として使用できないかというと以下のような理由になります。

  • 不特定多数の出入りを嫌がる
  • 電話や什器の音などによる弊害
  • 原状回復について

このように、周辺住民の方への配慮が一番の原因です。つまり、部屋を事務所用として使われてしまうと、ほかの居住者の居住環境が悪化してしまうということです。

不特定多数の出入りを嫌がる

まず、事務所にするということは、不特定多数が出入りする可能性があります。そのため、ほかの居住者が安全性や利便性などを懸念する恐れがあるということです。安全性とは、防犯面のことで、利便性とは「エレベーター待ちが多い」などの状況です。

電話や什器の音などによる弊害

また、事務所にするということは、電話やネット回線、コピー機などの什器を搬入することもあります。それらを搬入するときの音もそうですし、電話の音なども隣人からすると気になってしまいます。これらは「居住用」として住んでいる人にとっては、十分クレームに値する点です。

原状回復について

また、オーナーの立場からすると、事務所にされてしまうと原状回復の定義は難しくなります。通常の居住用賃貸物件の場合は、経年劣化に関してはオーナーが費用負担をします。しかし、ビルなどを事務所として契約するときには、経年劣化分も含め賃借人が原状回復をしてオーナーに渡します。

事務所にするということは、デスクも置くと思いますし、下にカーペットなどを敷き詰めることもあります。そうなると、室内環境が劣化しやすいので、補修費用も高額になります。そのため、事務所として契約をすると、専用の契約書面を締結する必要があり、補修期間も長いのでオーナーとしても避けたいということです。

居住用物件と事務所可物件で異なる税率

居住用物件と事務所可能物件は、税金が異なります。具体的には、「固定資産税」「消費税」に関して違いがありますのでチェックしときましょう。これは賃借人にも関係する部分です。

固定資産税について

居住用と事務所用では、敷地面積の計算方法が異なるため固定資産税に差異が生じます。たとえば、外部廊下などの共用部に関しては、居住用物件だと敷地面積には含めません。一方、事務所可能物件はこのような共用部も敷地面積に含まれます。

固定資産税は、「固定資産税評価額×敷地(もしくは室内)面積」という計算になるので、敷地面積が広い方が固定資産税額は上がります。つまり、事務所可能物件の方が敷地面積は広くカウントされるので、当然固定資産税額も上がってしまうということです。

消費税について

また、居住用物件と事務所可能物件は消費税に関しての考え方も異なります。居住用物件を賃貸した場合の「家賃収入」は非課税ですが、事務所可能物件の家賃収入には消費税がかかります。

つまり、オーナーからすると、せっかくもらった家賃をそのまま収入にすることはできずに、その収入に対してかかる消費税を支払う必要があるということです。

逆にいうと、事務所可能物件はこの「消費税」を加味した上で家賃設定をすることがあるので、賃借人からすると家賃が多少高くなる可能性があります。これは、前項の「固定資産税」についても同じことがいえます。

自宅兼事務所にするには?

前項までの話の通り、通常の居住用物件を事務所として利用することはできません。しかし、自宅兼事務所にしたいときなどは、以下の点を注意すれば事務所として利用することもできます。

  • 管理会社やオーナーの了承を得る
  • 事務所可能物件を探す
  • 業種によっては可能

上記のように、自宅兼事務所として利用できる可能性があります。

管理会社やオーナーの了承を得る

まずは、管理会社やオーナーへ確認をしましょう。物件によっては、オーナーや管理会社の了承を得られることもあり、了承を得ることができれば自宅兼事務所にしても問題ありません。しかし、管理規約で「事務所の使用は不可」と明記されている物件は、恐らく了承を得るのは難しいでしょう。

なぜなら、先ほどいった「他の居住者への迷惑」がかかるからです。仮に事務所NGの物件で、事務所利用を認めてしまえば、ほかの賃借人からオーナーへクレームが入りかねません。そのため、オーナーや管理会社に了承を得られるときは「業種によっては事務所利用可能」としている物件のみです。

事務所可能物件を探す

一番早い解決策は、事務所として利用可能な物件を探すことです。一般的には、事務所利用可能な物件は「SOHO利用可能」と言われている物件です。事務所利用可能な物件であれば、問題なく事務所として利用できます。ほかの入居者も事務所可能物件として認識しているので、クレームが入ることも少ないでしょう。

ただし、事務所可能物件とはいえ、全ての業種が事務所として利用できるワケではありません。たとえば、製造業の製造現場であったり、火器や危険物を取り扱う事務所だったりは、いくら事務所利用可能物件でも禁止されていることが多いです。

業種によっては可能

また、居住用物件に関しては、以下のような業種によっては事務所として利用できます。

  • 不特定多数の出入りがない
  • 危険物を取り扱わない
  • 騒音や臭いなどを出さない
  • 製造現場ではない

上記のほかに細かい決まりがありますが、要は「ライター」や「webデザイナー」など、個人でデスクワークをするような業種であれば可能ということです。この点は、管理規約集に明記されているので、まずはその項目を読みましょう。その後に、管理会社に確認するという流れが一番安心です。

勘違いしやすい点

事務所可能物件の話をするときに勘違いしやすいのは、「法人」か「個人」かという話です。結論から言うと、今までの話は法人として物件を「法人登記できるか」の話であり、個人事業主の方には関係のない話になります。

法人登記

個人事業主ではなく「株式会社」として法人を作る場合には、事務所を構え法人登記する必要があります。その登記する会社所在地を、自宅兼事務所にする場合の話が、上述している内容になります。つまり、法人の所在地として「登記して良い物件か?」ということです。

個人事業主

一方、個人事業主は法人ではないので、個人として自宅を契約しても問題ありません。もちろん、事務所可能物件であれば、個人名ではなく屋号(法人でいう会社名)で契約することもできますが、そもそも屋号で契約する必要性はありません。

法人であれば、法人名の事務所が必要になるので、自宅兼事務所でも必ず法人名義での契約が必要になります。しかし、個人事業主は個人の名前で物件を契約して、「事務所として利用している分」を経費として計上すれば問題ないです。

つまり、個人事業主として自宅兼事務所にしたい場合には、個人名で契約しても問題ないので、わざわざ事務所可能物件を利用することはありません。しかし、先ほど言った「危険物を取り扱う」「不特定多数の出入りがある」場合などはNGになるので、そのルールは確認しましょう。

このように、法人として自宅兼事務所として登記する場合には、通常の居住用物件だと難しい場合が多いです。そのため、まずは事務所利用可能な物件を探すことです。それでも見つかれなければ、オーナーや管理会社に相談をすると良いでしょう。


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